新田美波「わたしの弟が、亜人……?」
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928: ◆8zklXZsAwY[saga]
2019/08/18(日) 20:02:49.35 ID:TPJ777ywO

十五階の踊り場のドアが吹っ飛んだ。ひとつに纏まった黒い塊も同時に飛び出してきた。強い圧力によって変形したドアは壁にぶち当たり、うるさく音を立てながら階段を転がり落ちていく。黒い塊の上半分がテープを剥がしたときのように起き上がり、その扁平なかたちの頭部を永井のいる踊り場に向けた。



『は、は、は』


永井を睨めあげながらIBMが笑う。

ずるりと起き上がり、一足飛びで永井のもとまで跳んでいこうとするフラッドのIBM。真横から現れたアナスタシアのIBMが飛びついてそれを食い止める。足が床から離れた瞬間に肩からぶつかり手摺まで追いやる。二体のIBMが手摺の隙間から落下していく。永井は十六階と十七階のあいだの踊り場で平沢たちに追いついた。中野が持っている消火器の暗い赤色が眼に入った。階段を駆け上がる途中、壁を引っ掻く音が下階から聴こえ、思わず顔を左に向けた。何かの残像が一瞬だけ視界を通過したかと思うと、引っ掻き音が右側から近づいてきていた。脳裏に大振りのナイフを振りかぶる佐藤のイメージが蘇り、永井は反射的に右腕を振り上げ、首を守った。次の瞬間、壁から跳躍したIBMが永井の腕と首の皮膚を噛み千切った。

腕を吐き捨てたIBMは筈にした左手を喉に食らわせ、永井を壁に押し付けた。IBMが手に力を込める。首の骨が折れ、脳の重みによって右に傾いた永井の頭にIBMが右腕をのばす。

階段から跳躍した中野がIBMの頭部に身体ごとぶつかった。永井の頭部を掴む寸前に黒い右腕に自分の腕を回し、中野はIBMの身体を支柱のようにして宙で右側へと回った。遠心力によってIBMがすこし右に傾いた。一拍遅れてアナスタシアが階段を駆け下り、腕を開いて肩から膝にタックルする。痛んだのはむしろアナスタシアの肩の方でIBMはビクともしなかったが、さすがに纏わりつく二人をわずらわしく思ったのかIBMは首の折れた永井を投げ捨て、対処することにした。消火器が階段を転がり落ちてきた。



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