新田美波「わたしの弟が、亜人……?」
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879: ◆8zklXZsAwY[saga]
2019/05/06(月) 22:02:56.54 ID:kdA8uLchO

倒れたままの二体。アナスタシアが急いでIBMの体勢を立て直す。佐藤のIBMは尻もちをついた格好で黒い星十字を見上げている。

アナスタシアのIBMが上体を素早く起こし、残された左腕を偏平な頭部めがけて振り下ろそうと拳を握った。

あらゆる戦いは駆引きのゲームである。アナスタシアはそのことを学んだはずなのに、焦りのせいで駆引きの方針を放棄してしまった。

間違いに気づく……絶望感……凍てつくような感覚だった……

腕を振り上げたせいで大きく開いた脇に佐藤のIBMが蹴りを入れた。上体が押し出され、真下に打ち下ろすはずだった拳は偏平な爬虫類頭から大きく外れた。

佐藤のIBMは脚で脇を押したさいの反動を利用しアナスタシアのIBMの左側へするりと身体を移した。その途中、直下してゆく左腕の関節を右手で絡めとり床に押し付けると、半分になった前腕を大鉈のように拳めがけて叩きつけた。

手を構成していた粒子がはじけ飛び、空気の中へ消えていく。

手を喪失したIBMの両腕は、餌を取れずに身体が腐り動けなくなってしまった黒い芋虫のように役立たずになって垂れ下がっていた。

なす術がなくなった。だが、アナスタシアは哀れな反撃を試みる。手首の断面を突き出し、頭部を狙う。佐藤のIBMがスウェーする。腕の長さを完全に見切られ、ほんの僅か届かない。ゼノンのパラドックス──アキレスと亀のたとえのように、永遠に届かない距離。伸びきった手首の断面が下がる。佐藤のIBMのカウンター。肘のところまでしかない左腕が星十字めがけて真っ直ぐ走り──



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