838: ◆8zklXZsAwY[saga]
2019/03/24(日) 23:52:15.63 ID:6D6vTS+OO
『佐藤らしき男の目撃情報が』
「そんなバカな!」
ビル内からの無線連絡にフォージ安全の社員ははじめて感情を表した。亜人によるテロを防いだとしてメディアの取材を受けていたこの男性社員は爆発と佐藤出現の報によってすっかり冷静さの仮面が剥がれていた。
刑事は報告を苦渋の表情で聴いてきた。数秒の逡巡のあと、刑事は振り返り取り乱した様子のフォージ安全社員に向かって言った。
「あんたら、麻酔銃使ったんだろ?」
その言葉を聞いた男性社員の顔が一瞬で元に戻る。彼は刑事と対面した時と同じ顔と声を作り、言った。
「害獣対策用の麻酔銃を開発しています。田中侵入時、警備の数名が無断で使用してしまったようです」
会社の不利益になる可能性のある言葉は徹底して排除されていた。
刑事はそのことに興味はなかった。麻酔銃が使用可能かどうか、それが聞きたかった。
「なかにいる警官用に用意してくれ」
刑事の言葉にそばにいた制服警官が驚き、詰問口調で「いいんですか!?」と声を上げる。
「そういう組織の体質がやつらを野放しにしつづけてるんだろうが!」
刑事は叱責を返した。無線機を口元に寄せて、勢いに任せありったけの声量で叫ぶ。
「全班麻酔銃を受け取り、使用しろ! 全責任はおれが取る!」
「了解」と無線機から声が返ってくる。それを聞いた刑事は頭を下げ、後悔が混じったため息を吐くかのようにつぶいやた。
「クビだちくしょー」
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