784: ◆8zklXZsAwY[saga]
2019/01/26(土) 22:21:54.78 ID:ymR8HEsBO
手の触れたところがガコンとへこみ、甲斐の眼の前の壁が自動ドアのようにちょうどドアの横幅の分だけ開いた。
平沢が眼を見開いた。同時に真鍋が叫ぶ。
真鍋「セーフルーム!?」
ほかの二人の黒服、李も突如として現れた空間に驚愕し、動きを止めてしまった。その間隙の時間を利用し、甲斐はセーフルームに難なく滑り込んだ。甲斐の動きにわずかに遅れて真鍋が飛びつく勢いで走り出したが、すでに扉は閉まり出していた。
甲斐「あとは頼んだよ」
扉が閉まり切る直前、見捨てられたことを理解した悲痛な面持ちの李に向かって、甲斐はたったそれだけ言い残し、扉の向こうに消えた。
真鍋が李に向かって詰問した。
真鍋「あんた知ってたのか!?」
李「いえ!」
李は正気に返ってあわてて否定した。
真鍋「クソ野朗……ターゲットがいねえとダメだろーが」
李「大丈夫です」
正面のガラスに強いるように見ながら李は震えた声で言った。閉じられた透明の扉の開閉部は一枚ガラスから独立していて、その切れ目の線がいやに眼についた。李はさらに言葉を続けたが、それは恨めしげに壁を睨みつける真鍋やほかの黒服たちにというより、自分に向かって言い聞かせているふうだった。
李「わたしは……逃げませんから」
ーー
ーー
ーー
968Res/1014.51 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20