714: ◆8zklXZsAwY[saga]
2018/11/04(日) 21:09:55.20 ID:jiMS7eDVO
黒服2「うろこ雲か……」
年嵩の黒服が暮れなずむ空に散らばる黒い雲の欠片をながめながらつぶやいた。
十五階のゲスト用の宿泊室の北側に面した壁面はガラス張りになっていて、周囲のビル群を見下ろし睥睨することができた。
日がな一日天候は不安定で、鈍色の空からポツポツと雨滴が降り落ちてはやみ、またポツポツ降り始めるという具合だった。それだけならたいしたことはないが、なにしろ風が強かったので、傘が手の中で独楽のように暴れまわるのがやっかいだった。
茜色の空の天頂のあたりが青みがかった薄闇に染まりはじめていたが、全体としてはまだ赤い部分が支配的で風のうねる音はビル群にのしかかる竜の唸る声のようだった。
真鍋「台風が近いってな。予報で言ってたぞ」
真鍋が麻酔銃の照準をたしかめながら言った。平沢は隣で拳銃を分解して整備している。若い方の黒服はベッドで本を読んでいる。真鍋たちを挟んだベッドの反対側にデスクがあり、戸崎が椅子に座り並べてノートパソコンでニュースを見ていた。下村はいつものように戸崎の側にひかえている。
中野「なあ!」
弛緩してはいないが張りつめてもいない待機時間に耐えかねて、中野が叫んだ。
中野「いつ来るんだよ、やつらは!」
中野は準備万端で、ショルダーホルスターを付け予備のマガジンを両脇から下げている。
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