688: ◆8zklXZsAwY[saga]
2018/10/15(月) 21:14:14.31 ID:z5kRHM0CO
平沢「中野ってやつは、他人の信頼を得るのがうまい。同じ教室にいたらあいつはヒーローで、おまえはただの嫌なやつだろう」
平沢「だが、ここは学校じゃない。ここじゃあ、倫理や感情を断ち切る圧倒的な決断が必ず必要になる。本当だ。おまえはそれができる」
平沢「信頼関係を築くことももちろん役に立つが、それはおまえの仕事じゃない」
平沢「おまえはそれでいい」
永井「……だから、わかってるって」
永井は、自分でもなぜかわからないがそっぽを向いてしまった。
平沢「そうか。なら、おれの勘違いだ」
平沢が腰をあげ、立ち去ろうとした。拡大された影が回り込むように揺らめいた。鈴虫のいる草を踏む足音、蛾がランタンにぶつかる音、蛾は光源の発光ダイオードを求めて何度もぶつかった、コッコッ、リリリ、カサカサ。
永井「父は優秀な外科医だった。どんな患者にも親身なれて、退院した人から毎年手紙が届くくらいだ」
永井「それこそが、最大の欠点」
永井は不意に語り始めた。平沢は立ち止まった。永井の語り口は燠火の前で語られる独白のようだ、
平沢は振り向かず話を聴いた。助かる術のない患者、ドナーはいない、臓器売買に手を出し、結果すべてをうしなう。感情を優先させた結果。他人の死を受け入れなかった結果。
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