661: ◆8zklXZsAwY[saga]
2018/10/15(月) 20:20:16.24 ID:z5kRHM0CO
オグラ「アイオワの農家の亜人が似たような事例だった」
オグラが話し出し、永井はそちらに向き直った。中野は磔にされたままだったが、二人ともそちらを気にもせず、会話に意識をむけていた。
オグラ「最初のうちはIBMに草むしりなどの単純作業をやらせていた。だが数年後のある朝、自発的にコーンの刈り入れをしていたそうだ。トラクターを操縦してな。きみの場合、長いことほっときすぎたことが原因だな」
永井「一ヶ月くらいまえですよ? はじめて出したのは」
オグラ「いや、きみはもっと昔からだ。多分、幼少期」
オグラの指摘は永井の無防備だったところを衝いた。幼少期という言葉が、その頃に体験した死についての記憶を呼び起こした。
飼い始めてすぐに死んだ子犬。父と姉と別れて暮らし始めたときに飼い始めてすぐに死んだ子犬。
その亡骸を段ボール箱のなかにそっと入れ、妹といっしょに川辺まで歩いていってそこに埋葬したのだ。妹は泣いていた。永井も悲しくはあったが、死という現象、その存在について疑問に思う気持ちのほうが強かった。
別、に……死な……なく、ても……。
永井は考えていたことを声に出したのかと思ったが、そうだとしてもたどたどしい発声になるはずなく、だとしたらこの声はなんだと思い、背後の土手のほうを振り返った。
そこに黒い幽霊がいたことを永井ははっきり思い出した。
永井はふと、自分は、産まれたときにはすでに死んでいたのだろうかと思った。
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