新田美波「わたしの弟が、亜人……?」
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582: ◆8zklXZsAwY[saga]
2018/04/17(火) 21:54:28.10 ID:7BzTB0Y9O

アナスタシア「いたい!」

中野「いてっ」


 手のひらと手の甲の両方に痛みが走った。中野のほうは硬い前頭骨に守られていたので、反射的に言葉が出ただけだった。中野は額を擦りながら頭を後ろにまわす。アナスタシアは下唇を噛みながら、赤くなってヒリヒリしている指を中野に見せてきた。

 
永井「どいつもこいつもバカばっか」


 永井はふたりにスマートフォンで動画を見せた。

 動画には佐藤が映っていた。亜人の人体実験に関与した十一名の顔写真と氏名、所属する組織とその役職名がプリントアウトされた用紙を佐藤は手に持ち、彼らを暗殺すると宣言していた。
 

佐藤『第二ウェーブは第三ウェーブへのカウントダウンでもある』


 佐藤の背後には奥行きのない空間があった。プロジェクター合成された晴れた日の公園の風景。この背景は、その明るさによって、人物の不在が際立っていた。

 佐藤が話を続ける。


佐藤『このウェーブ終了までに国が亜人弾圧の姿勢を改めていなかった場合、我々は第三ウェーブへコマを進める』

佐藤『第三……それが、最終ウェーブだ』


 佐藤はいちど言葉を切り、頭を下げる。頭を上げると、カメラに視線を戻し、こう宣言した。


佐藤『私がこの国を統治する』

佐藤『陳腐な夢に聞こえるか? 私はやる』


 佐藤の口角が笑みを作るようにあがり、動画は終了した。

 中野もアナスタシアも、しばらく言葉を失っていた。いまや二人とも、佐藤が暗殺を実行している様子──開始から達成までを鮮明に──思い浮かべることができた。


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