452: ◆X5vKxFyzyo[saga]
2017/09/25(月) 21:09:39.33 ID:4fkctst+O
右上腕のあたりがばっくりと切れ、傷口から下がいまも流れる血で真っ赤に染まっている。右腕だけ赤い死人のような白い女というのが、この怪我をした女性を見た誰もが抱く印象だった。
女性は同じ姿勢のまままったく動かなかったので、もしかしたら死んでいるのでは、と店内にいる者は思った。
かな子「だ……大丈夫ですか?」
濡れたハンカチを手に持って、かな子は女性に話しかける。女性が反応を示さないので、かな子は躊躇したが、傷口から流れる血を見て、せめて怪我したところを綺麗にしようとハンカチをそっと近づけた。
傷口にハンカチが触れた瞬間、女性はゆっくりとぎこちない動作で首をあげ、かな子を見た。その眼を見た途端、かな子の手が止まった。女性はかな子から視線を外し、ゆっくりと店内を見渡した。女性の眼を見た全員が、かな子と同じく息を止め、その場に立ち竦んでいた。その女性を助けにいったカメラマンとスタッフも同様の反応を見せていた。見開かれた女性の眼は人間のものとは思えなかった。
それは幽霊の眼だった。自分が死んだことを自覚した幽霊の眼。彼女には、かな子や他の人間たちを自分と同じ幽霊として認識しているというふうな視線をあちこちに向けていて、その眼に見られた人間は彼女と同じ見方が伝染したかのように世界の見方が違って見えた。
外では粉塵が落ち着きはじめていた。景色に輪郭が戻ってくると、そこに広がっていたのは、破片が積み重なる、灰を被ったかのような真っ白な光景だった。
ーー
ーー
ーー
968Res/1014.51 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20