275: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/07/08(土) 12:25:35.97 ID:8mPTevMeO
九三年にオープンするはずだったホテルサンヘイリの有様は、二十年近く放置されていたにしては、立派に聳え立っているといってよかった。建物は周囲を鬱蒼とした森に囲まれた場所にあり、真上から降り注ぐ陽射しと森から沸き起こってくる蝉の鳴き声を一身に浴びている。もともとはこの森を切り開き、ゴルフ場やリゾート施設を建設する予定だったが、バブル崩壊を期に開発計画は頓挫。いまでは伸び放題の雑草とスプレーの落書きがこの夢の跡を飾っている。
この廃墟のまえに七人の男たちがいる。かれらはみな亜人で、二日前に厚生労働省に集い、ここに再集合していた。
かれらは大半は二十代半ばから後半と思えた。ストライプの半袖シャツとハーフのジーンズ、サンダルという格好の男と、カーディガンを肘までまくり、長髪を後ろで束ねている男は付き合いがあるらしく、緊張感なく他愛もないことをくっちゃべっている。他の者たちは互いに視線を合わせようとせず、黙りこくっている。眼鏡をかけた坊主頭の者、ショルダーバッグを肩からかけている者、曲がった右足の杖をついたジャージの者などがいた。いちばん若いのは、髪を茶色に染めた十代後半の少年。髪を短く刈り上げた体格の良い男性がおそらくもっとも年齢が上で、腕時計をみて時間を確認している。
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