新田美波「わたしの弟が、亜人……?」
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18: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/01/03(火) 00:24:20.94 ID:5kzXp0UHO


慧理子「兄さんは、そんな人なんかじゃない」


妹がそんな言葉を口にしたのは、冬に開催された一大ライブ「シンデレラの舞踏会」が成功に終わってから数週間後、美波がお見舞いに来た病室でのことだった。

空に積み重なった雲がその青黒い腹を見せながら、太陽の下半分を隠す、強い肌寒さを感じさせる日だった。灰色をした冬の翳りが病室に侵入してきて、電動ファンヒーターの熱した赤い部分が翳りによってその赤さを濃くしている。

慧理子は床に置かれたヒーターの放熱をくつ下越しの足で感じながら、ベットに腰掛けていた。ひざとひざをくっつけて、身体を美波の正面に向け、ライブの話をするよう姉にせがんだ。

美波はすこし躊躇したが、期待に満ちた目を向ける妹は裏切れない。話していくうちに、美波は、自分の口調に熱が帯びていくのがわかった。あの日の光景は、まるで記憶が結晶になったかのようにくっきりと細部まで覚えている。煌めき、歓声、歌、仲間たち。あの日の記憶を形作っているあらゆる要素は、熟達の宝石職人によってカットが施されたダイヤモンドのファセットのようなもので、どんなことを語ってもその輝きの美しさを余すところなく伝えられる。


慧理子「いいなあ。わたしもいつか姉さんのライブに行ってみたい」

美波「行けるわよ」

慧理子「病気が治ればね」




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