177: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/04/23(日) 21:15:43.80 ID:5HbT9nK2O
フード付きの青いレインコートを頭からすっぽり被ったその人物が報道陣から離れた西側の林の中を慎重に歩いていると、草の上に引かれた黄色い真っ直ぐな光線が爪先にかかり、反射的に脚を引っ込めるのと同時に研究所の反対側から爆発音がした。
レインコートの人物は十日前から可能な限り研究所を訪れていた。はじめはうっかりして研究所を眺めるために周辺を徘徊してしまい、応援に駆けつけた報道局の人間か警備員に見つかってしまうこともあった。その場からすぐ離れれば問題は起きなかったが、自身の不用意さにひどく恥ずかしくなった。
次の日からはもっと思いきった行動を選択した。研究所の中に黒い幽霊を忍び込ませたのだ。黒い幽霊は人間には見えないし、撮影機器にも映らない悪さをするにはうってつけの存在だった。とはいえ、そのうってつけのためにその人物は後ろめたさに悩んだ。父親との約束を破り自ら一線を踏み越えてしまったことへの罪悪感から、黒い幽霊の操作に躊躇いが生じ、研究所の一階部分を見て回るのにも数日かかった。一階の捜索では、美波の弟を見つけることはできなかった。
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