172: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/04/23(日) 21:07:21.02 ID:5HbT9nK2O
スプリンクラーはまだ水を撒き続けていた。研究所の三階、サンプルの保管室へと繋がる通路の前に、十五名の警備員がピストルタイプの麻酔銃を構えて侵入者を待ち構えていた。警備主任が、順番に撃てよ、過剰投与は結果的に殺害になりかねない、と荒っぽく声をあげる。主任は保管室の前、つまり最も後方にいた。前方にいる警備員たちの手が震えていた。さっきから、ぱん、ぱん、ぱん、と散発的に、ときには連続して発砲音が聞こえてきたからだ。その音はシャッターに阻まれてこもって聞こえたが、明らかに保管室に近づいていた。ごん、という金属を金属で思いっきり叩いたかのような音が響いた。前方の警備員たちの身体がびくっと跳ねて、一人が麻酔銃を手から落としそうになる。銃弾が分厚いシャッターに当たった音だった。それから少しの間、銃撃は止んで、スプリンクラーの散水音しか聞こえなくなった。片膝をついて麻酔銃を構える若い警備員が、必要以上に力を入れて麻酔銃を握り直す。防火シャッターは、一瞬震えたかと思うと、ゆっくりと左右に扉を開けてゆく。そこから見えるのは同僚たちの死体だ。皆、頭か胸を撃ち抜かれ、床に倒れている。床を浸す水は血の赤色を薄めて、警備員たちのいる通路に向けて洗い流そうとしている。シャッターすでに半分以上開いたが、侵入者の姿はまだ見えない。先頭にいる警備員は彼から見て右側のシャッターのすぐの横の床に近いところに、小さな黒い穴がぽつんとあるのに気がついた。その警備員は眉間を撃ち抜かれ、死んだ。
佐藤「いくよー」
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