161: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/04/23(日) 20:52:16.95 ID:5HbT9nK2O
永井はふたたび意識を取り戻し眼は光を受容したが、視界は白一色に染まり何も見えなかった。眼に覆いをかけられているせいだった。瞼に触れる覆いが包帯であること、さらに全身に包帯がきつく巻かれていることを今度はあらかじめ知っていた。腕に力を入れてみたが、すこし震えただけで上がらない。全身が手術台の上で固定されていた。永井はもがくのやめこれから到来する苦痛に呼吸を荒くしていると、自分の喉から出てくる音がやはり声でなくなっていることに気がついた。喉はただの風穴になっていて、隙間風のような空気が漏れ出てくる音しか出さない。声帯が切り取られていたせいだった。
研究員1「よーし、後半戦いくぞー」
ふたたび研究員の声が上から降ってきた。
研究員3「上の命令はとにかく痛みを与えろだと」
研究員2「何の実験ですかね」
研究員1「さあな。おれらは従うだけだ」
研究員3「さてと……歯からいくぞ」
永井の喉から洩れる音は声とはいえないほど掠れてくもぐっていたが、それでも苦痛に苛まれている者が発する悲痛な音声であることは誰の耳にもあきらかだった。
実験室の使用を示す赤いランプはそれでもずっと灯り続け、掠れた空気の洩れる音も点灯と同じだけ鳴り続けていた。
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