102: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/03/24(金) 21:55:24.76 ID:NJ9NkxEDO
佐藤の場合はどうなのだろう? 圭も監視カメラを破壊したり、人間の失踪に関わったりするようになるのだろうか? それとも佐藤はやっぱり亜人の味方で、圭に畳の上に蒲団を敷いた居心地の良い寝床を用意してくれるのだろうか(圭が安心できる部屋の風景のイメージが和風だったのは、おそらく研究施設に和室がないだろうと美波が想像していたからだった)?
いや、でもやっぱり、正直に言ってしまおう。わたしは不安を感じていたのだ。あの人の微笑みは穏やかでやわらかかった。ぎこちないところは少しもなくて、頬が上がると目尻の皺がいっしょになっていままさに線が描かれているかのように曲線が深くなった。でもあの表情は内面の感情から起こされたものではなかった。それはどこまでも顔筋の作用に還元できた。あの人は笑顔を操作していた。佐藤さんの笑顔は、空欄のある数式に正しい答えを書き込むことを思わせた。そうすれば、わたしから圭のことを聞き出せるから。なんでこんなことを考えているのだろう? 考えることと不安を感じることは頭の別々のはたらきで、考えてみると不安という感情には根拠がないとわかってくる。違和感だけでは、佐藤さんがほんとうはどんな人なのか判断できない。そう、わたしは佐藤さんのことが、全然わからない……
美波はこれ以上このわからなさに留まって、自分なりの答えを出すことはできなかった。映像が記録しているとおり、美波は亜人管理委員会の方針に則った。美波が思考を働かせた可能性やわからなさは、どちら側の選択がおわったあとでも消えてなくなったわけではなく依然としてこの世に存在していて、空気のように見えなくてもなんらかのかたちを持ってあらわれてくるのを待っていた。美波だってその可能性やわからなさを放棄したわけではなかったが、会見を見る多くの人間にとってそんなことは関係なく、こちら側にいる人間として発信されたメッセージを、主にかわいそうだねとかるく同情しながら安心して受け取った。
シンデレラプロジェクトのメンバーたちは、安心したとはいえなかった。
968Res/1014.51 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20