311: ◆3em28n6/NM[sage saga]
2017/12/31(日) 23:33:53.40 ID:tgL1bz3k0
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桃子(發・ドラ4、リーチ……!むっちゃん先輩、いっきに来たっすね)
正直、こんな番狂わせがあるとは思っていなかった。
桃子(でも、私のすることは変わらない)チャッ
245667m468s2345(赤)p ツモ2p
桃子(これを最速で和了る……)つ二萬
テンパイ時に余る四・八索はどちらも危険牌。しかし当然、今の桃子には関係無い。
桃子(まるで私だけ別のゲームをしてるみたいっすね)
トッ……タン……
桃子「……須賀君。これが私の運命っすよ」ボソッ
静かに、しかし卓の面子にははっきり聞こえる声量。ゆみは制止してはくれない。
桃子「加治木先輩でさえ、熱中すれば私のことを忘れてしまう……私を求めたくれた人でさえ」
その声は、もう誰にも届かない。
桃子「私のことを忘れないって、そう言ってくれた時は……ちょっと嬉しかったっすよ。
でも、その手にあるメモが何の役に立ったっすか?」
何が書かれていたのかは分からないが、京太郎はこの卓についてから一度もメモを見ようとはしなかった。
当然だ……桃子の存在を忘れてしまったら、そのメモの存在も同時に忘れてしまう。
桃子「事前に考えた対抗策すら、あなたは思い出せない。私とまともに麻雀を打てるのは、画面の向こう側の人だけっす」
そう、これはもうまともな麻雀ではない。桃子が本気を出せば、 相手は抗うこともできないのだから。
桃子「でも、これは仕方ないこと……麻雀部の一員として、この影の薄さを否定することはできない」
それは桃子の「力」だ。麻雀部に貢献するための。
桃子「いつか、ここを卒業して……みんなが離れ離れになったら、私のことは忘れられるかもしれない。
でも、今が幸せだから……誰の記憶に残らなくっても、私はそれで良いっすよ」
一人語りを終え、何度目かのツモ……白。
桃子(ツモ切りっすね)スッ
そして何の気なしに顔を上げ、対面を見る――
京太郎「……」ジッ
桃子「え……?」ゾクッ
思わず声が漏れた。
桃子(そんな、そんなはずは……!?)
その瞬間、桃子が感じたのは本能的な恐怖。
例えるなら、自分の部屋に一人でいたはずなのに、いつのまにか誰かが隣にいたような衝撃。
――京太郎が、桃子を見ている。
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