2:名無しNIPPER
2016/11/15(火) 19:43:46.49 ID:ZTyGLDnn0
「うぐっ、げほぉっ」
スーツ姿の男が、大きくむせて尻餅をついた。
彼は先程まで、5メートルは手前にいたはずだった。そして今その場には、赤いリボンが様々に巻き付いた怪物が掌を突き出した姿勢で立っている。
「弱い…」
怪物は、反響する女性の声で呟いた。
「『まゆは俺が守る』…?あなたたちは所詮私たちに成り代わるだけの卑小な存在…非力を知りなさい…」
「おごっ…げほぁ…」
スーツ姿の男…アイドル事務所「御白(ミシロ)プロダクション」のプロデューサーは、フラフラと立ち上が…ろうとして
「ぐぅぅ…」
どさ、と再び崩れ落ちた。体の丈夫さだけが取り柄で、若い頃といえば喧嘩負けなしの「鬼神」と呼ばれた男だったが
眼前の怪物は文字通り「人外の強さ」であった。
(すまん…まゆ…俺は、お前を…大切な担当アイドルの一人も、守れない男だ…)
プロデューサーの歪んだ視界には、怪物の後ろ、桃色のワンピースに身を包んだ少女に向けられていた。
佐久間まゆ。彼の担当するアイドルの一人…彼に好意を抱き、彼を追ってアイドルになった少女。
そして彼もまたその少女の好意に答えるように、精一杯守り、プロデュースしてきた。
…なのに今は、薄汚れた地面に横たわりピクリとも動かない。
「私にはわかる…お前の死によって、私は完全な姿になる…」
リボンの怪物はゆっくりとした足取りで、プロデューサーににじみ寄っていく。
まるで彼を…そして虚ろな目でそれを見つめるしかできない少女を絶望させるかのように
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