季節走り 心はいつまでも (モバマス)(輿水幸子)
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13: ◆MhRo2YnWE.V/[saga]
2016/09/29(木) 04:35:04.90 ID:4gwQuLZH0
 幸子と並んで歩いていると、未だに人目が気になる。
 注目を集めていることはないはずなんだが、一種の職業病だ。変装もしていないアイドルと一緒に出歩くなんてことは、まずないからな。
 何よりも、今、俺と歩いてる彼女は輿水幸子なのだ。

「……そんなに気にしなくても大丈夫ですよ。三ヶ月くらいで、顔を出しても声をかけられることはなくなりました」

「ああ、それはわかっているんだけどな……」

 もっとも、それもあまり納得はできない話だ。あんなに顔と名を知られたはずの幸子が、こんな速さで忘れられていいものか。実際に注目されない事実には悔しさがある。
 普段使っている自分の車が壊れてなければ、こんな気分を味あわなくても済んだのだが。

「悪いな、歩かせてしまって」

 そんな俺の言葉に、幸子は不満な様子もなくおかしそうに笑っている。

「構いません。実は私もこうして、アナタと街を歩いてみたかったんです」

「そ、そうなのか」

 彼女は急にこういうことを言うので困る。適切な距離をはかりかねている俺がいる。
 ……並んで歩く俺達は、どんな風に見えているんだろうな。
 父と娘、兄と妹、親戚同士。……いや、俺と彼女に血縁関係を見出すのは難しいか。となると……。

「ちゃんと恋人同士に見えていますかね」

 俺は足を踏み外して倒れそうになった。

「冗談ですよ、冗談」

 そんな俺を見て、また幸子は、なんとも楽しそうに笑っているのだった。


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