714:名無しNIPPER[saga]
2021/06/23(水) 14:51:52.11 ID:joB1L1uj0
クリスタルボウイ「なかなか面白いヤツだろう?だが、俺が見せたかったのはこの男ではない」
クリスタルボウイ「これだ」
クリスタルボウイが右手の鉤爪を掲げると、二又の爪の間から、白い輝きが走った。
その輝きは鉤爪から離れ、クリスタルボウイの頭上に位置すると、大きさを増し、質量を伴っていった。
そして輝きが収まると、あとにはひと抱えもある巨大な器が残った。
クリスタルボウイ「これが神々が、貴様ら不死人に託そうとした使命。王の器だ」
クリスタルボウイ「もっとも、この器も神々の計画、真の不死の使命とやらの始まりに過ぎんがな」
王の器と呼ばれた大器は、クリスタルボウイの視線に導かれ、宙を移動し、置かれるべきところの真上で止まった。
器があるべき場所とは、石の大門の前。枯れた古木の切り株の上である。
パッチ「…なんなんだよ…あんたら…」
パッチ「不死の使命なんて…俺はどうでもいいんだ…なぁ帰してくれよ…頼むよ…」ゴホッ
クリスタルボウイ「返すさ。お前にはメッセンジャーになってもらわなければな」
パッチ「メッセンジャー…?」
クリスタルボウイ「この時の歪んだロードランの地にある篝火は、縁で全て繋がっている」
クリスタルボウイ「過去の篝火も、現在の篝火も、未来の篝火も、僻地のものだろうが、死地のものだろうが関係無くな」
クリスタルボウイ「あの器は、その全ての篝火の縁を利用した転送装置なのだ。器の持ち主は、篝火のあるところに望みのものを転送できるのだ」
クリスタルボウイ「そして篝火の縁は、無の世界に生まれ、世界に光と闇、熱と冷たさ、生と死を生じさせたはじまりの篝火とも例外なく繋がっている」
クリスタルボウイ「更には今は、空前絶後の規模と言える時の合一が起きている。繋がりはより強固に、より正確なものになっているだろうな」
クリスタルボウイ「繋がっているからといって、はじまりの篝火をタダで受け継ぐとはいかんがね」ククク…
クリスタルボウイ「ならばパッチよ」
パッチ「…?」
クリスタルボウイ「はじまりの篝火から生じたものが、他の篝火に移動できるのなら、はじまりの篝火に照らされたものも移動できると考えるのも、自然なことだろう?」
パッチ「………」
パッチ「……あんた…なに言ってんだ……なにをやろうってんだよ…」
クリスタルボウイ「狼煙をあげるのさ」
クリスタルボウイ「この俺の、反撃の狼煙をな」
ガコン…
王の器は、重々しい音を響かせて、古木の切り株の降りた。
そして器の中心からは、地響きとともに、炎にも似た輝きが揺らぎ始める。
しかし、その揺らぎは小さくなり、器の外縁部から立ち上る闇の霧に囲まれ、食い荒らされ、肥大した。
その肥大した様は黒い炎とも言える様であり…
ゴワアァァーーッ!!!
天に向かって噴出する様は、山が自らの死の瞬間に噴き出す、赤黒い火柱のようだった。
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