711:名無しNIPPER[saga]
2021/06/23(水) 12:02:41.41 ID:joB1L1uj0
クリスタルボウイ「さて、ついでにお前にも面白いものを見せてやるぞ、パッチよ」
ガシッ
パッチ「!!」グンッ
クリスタルボウイは、へたり込んだパッチの胸ぐらを掴むと、石ころを拾い上げるような軽やかさで持ち上げた。
パッチ「や、やめろ!頼む!やめてくれ!」
クリスタルボウイ「フッ、遠慮しなくてもいいだろう。俺とお前の仲じゃないか」
そして、やはり重さを感じさせない歩みで、蛇が顔を覗かせていた大穴へと向かう。
パッチの脳裏に、絶対に考えたくない想像が顔を覗かせる。
パッチ「ま、待ってくれ!待ってください!なんでもします!こっ、こう見えても役には立ちますぜ!旦那!なぁ頼むよ!」
クリスタルボウイ「ほーう、なんでもするのか」
パッチ「は、はい!!なんでも!へへ…」
パッチ「へ……」
希望が見えたと喜んだのも、束の間だった。
なんでもすると言ってしまった以上、今最も考えられる己の末路も、その選択肢の内に入ってしまうことにパッチは気付いた。
パッチ「…あ…穴に落ちろっていうの以外は…はは…」
クリスタルボウイ「安心しろ、俺にも仏心はある。落ちろとは言わんさ」
パッチ「……」ホッ…
クリスタルボウイ「ついて来い」
タッ
パッチ「!!!!」
クリスタルボウイは、穴に向かって一歩踏み出した。
パッチを掴み上げたままに。
パッチ「あああああああああああああああああああああああ!!!」
全身を叩く突風の中で、パッチの頭は絶望一色だった。
崖下に突き落とした聖職者の一行のことなど、一片たりとも思い浮かばない。
人の世での経験や、ロードランでの経験なども、走馬燈とはならず、ただ恐怖と絶望だけが吹き荒んでいる。
パッチという男は過去を顧みず、今だけを見据えるをモットーとしている。
なればこそ、現在に絶望が横たわり、そこからはどう足掻いても決して逃げられないと悟ったならば、心はただ砕けるばかりなのだ。
クリスタルボウイはしかし、喚くパッチをを黙らせるでもなく、鉤爪を暗い縦穴の壁に突き刺した。
ガギイィィィ!!
パッチ「あがっ!」ガクン
急な減速でもんどりを打ったパッチは嘔吐しそうになったが、不死人ゆえに胃袋はからであり、胃液のひとつも出なかった。
熱く輝く糸を撒き散らしながら、金切り音を上げてクリスタルボウイは縦穴を落下し続け…
ガヅッ
パッチ「!!!!」
ある高さまで来ると、鉤爪を壁から外した。
パッチは再び始まった加速にまたも恐怖したが。
ドガァン!!
着地の衝撃で気を失った。
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