620:名無しNIPPER[saga]
2019/10/07(月) 13:14:45.12 ID:e5A9POpf0
コブラ「毒沼……ふーん、そういうコトか」
コブラ「権力を握って増長したか。この女神様のサドっ気が増してきたぜ」
コブラ「俺が見たアノール・ロンドには蛆虫一匹湧いちゃいなかったし、それどころか鉄の巨人が護ってた砦にだって、病み村のヘドロは染み出しちゃいなかった」
コブラ「こいつは警護にかこつけた体のいい軟禁だ。それも無期限のな」
コブラ「それにこの巨人、鷹の目といったか?鷹の目っていやぁ、前見た記憶では四騎士の一人ってことになってたはずだ。大戦争で名を挙げた四大英雄の二人にこんな悪ふざけをやったんだ、どうせ残りの二人にもロクでもない事してるんだろ?」
グウィンドリン「然り。ベルカはゴーを追放し、オーンスタインから多くの権限を奪ったのちに、すぐさま王の刃キアランを捕え、牢に繋いだ」
コブラ「やはりな。キアランってのは、例の刺客達のボス格のことだったか?王家に仕える暗殺者が王家の衰退と共に仕返しをされるなんていうのは、よくあることだ」
コブラ「だが変だぜ。暗殺者には必ず雇い主と協力者がいる。王という雇い主は消えたかもしれないが、協力者はまだいるはずだ」
コブラ「そいつらのツテを使えば、腕の良い暗殺者がのろまな近衛兵なんかに捕まるわけが無い。だがアンタはキアランがすぐに捕まったと言った」
コブラ「まさかとは思うがそのキアランってヤツ、ベルカとの繋がりをベルカ本人に恐れられて、ズバーっとやられたんじゃないのか?」
グウィンドリン「それはありえんな」
コブラ「なに?」
グウィンドリン「王の刃にはただひとつの掟が課される。掟とは『王の命により剣を振るうこと』のみ」
グウィンドリン「一度命があれば、それが誰であろうと斬るのが、かの女神の使命なのだ。それが敵や味方であろうと、己や友であろうと、例え王であろうとな」
グウィンドリン「そしてキアランの剣を収める事ができるのもまた、王のただ一柱のみ」
グウィンドリン「ゆえに玉座が空である時は、キアランは決して剣を抜かぬ。敵や味方に斬られようと、己や友に裏切られようとも」
コブラ「流石に仕事一筋か。もし会うことがあれば、まずはお化粧チェックだな」
グウィンドリン「職人気質から来る行いでは無い。忠義に厚く、闇の中でただひとつ輝く神の都を愛しているがゆえだ」
コブラ「やれやれ、全てはサラマンダー総統のために、か。報いてくれる保証も無いのによくやるねまったく」
グウィンドリン「サラマンダー?誰のことだ?」
コブラ「場末のバーで千年もクダ巻いてた酔っ払いさ」
グウィンドリン「……問われた際に煙に巻くのなら、はじめから皮肉など言うな。貴公の悪い癖だぞ」
コブラ「あーらら、説教されちゃった」
弾劾の場から神々が消え、裁かれる者たちも消え、次の転移が始まる。
移りゆく景色を眺めながら、親しい者が追いやられていく場面で言う冗談では無かったと、コブラは内心反省した。
もっとも心同士が繋がっている以上、その真意もグウィンドリンに筒抜けなのだが、真意を胸に秘めるという癖もまた、コブラの治らぬ癖のひとつだった。
そしてグウィンドリンは、その癖に父と兄の背を見、母の声を想った。
霧降のアノール・ロンドに、果たして真意を語れる者がどれだけいたのだろうか、と。
コブラ「ん?」
転移が終わり、コブラは僅かだが拍子抜けした。
柱の森を埋める神々の姿も、玉座を前に裁かれた者たちも、そしてグウィンドリンとグウィネヴィアを除く王の系譜の姿も消えたが、場所は全く変わらなかったのである。
空の玉座の正面右隣には罪の女神が立ち、その周りには見届け役として、暫定政府の面々と思しき神々が並び、それに混じって法官が書を開いている。
空の玉座の正面左隣にはグウィネヴィアとグウィンドリンが立ち、彼らの背後には、月と太陽の女神が立つ。
ベルカ「入れ」
罪の女神の声と共に、群青色のサーコートを鎧の上に羽織った騎士が、寒々しい大広間に歩を進めた。
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