619:名無しNIPPER[saga]
2019/10/06(日) 22:21:03.92 ID:nAUZyT2m0
グウィンドリン「我らがアノール・ロンドも、その地に住む神ですら、全ては火を護り、あらゆる生命を存続させるための生贄にすぎない」
グウィンドリン「我が母上の慈愛もそこに帰結する。だが運命は皮肉を心得ていたようだ」
グウィンドリンの言葉と共に、暗闇は晴れて、先程映ったばかりの風景を再び形作る。
白い柱の広間を一杯に埋め尽くす神々と、空の玉座の隣に立つ罪の女神ベルカの姿は、コブラにここが弾劾の場である事を瞬時に悟らせた。
どのような意図のものか、虜囚の身である月の子らも揃って参席を許されていたが、真に驚くべき点は、裁かれる者達の姿である。
オーンスタイン「我らが竜狩りを怠り、怠惰の限りを尽くしていたと言うだけならば、まだよい。だが前王を侮…」
巨人「まだよい!まだよいだとォーッ!!」
ズドドオオォォーーッ!!!
コブラ「おおっ!?」
ベルカの眼前に立つ竜狩りの隣で、足裏を石床に打ち付けた巨人がいる。
巨人は胴と手足に鉄を巻き、右肩に石の木を付け、左肩を露わにした巨人が立っていた。
踏みつけられた石床は蜘蛛の巣の如くひび割れ、揺らぎは王城中を響き渡り、巨人の兜の覗き穴からは、炎の如く燃える真っ赤な目が、周囲に矢のような気炎を放っていた。
その恐ろしさに、弾劾の場を見張る銀騎士達でさえも、巨人に剣を向ける事を躊躇した。
ベルカ「不服とのたまうか。鷹の目のゴーともあろう者が児戯のごと…」
ゴー「王より我らが仰せつかった任は世を護る清き使命であり、それに込められし威光はあくまで絶対!!我らの忠義を疑うなど、貴様は我らを辱めるだけでは飽き足らぬというのか!!」
ベルカ「我が言葉がいつ王の座を穢したというのだ。かような思いに耽る、汝の心根こそが腐臭を放っているのではないのか?」
ゴー「オオオオーーッ!!!」グワッ!
ガシイィーー!!
スモウをも超える巨体を目にも留まらぬ疾さで動かし、ベルカの胴を鷲掴んだゴー。
その右肩には、既に竜狩りが立っていた。
ゴー「!」
オーンスタイン「それ以上の狼藉は許さん。罪の女神を離さなければ、貴公の首を斬る」
ゴー「オーンスタイン……貴公、王より与えられし友情を捨てるかっ……!」
オーンスタイン「友であるから警告を挟めたのだ」
ゴー「………」
己が既に、多くの面で死に体であることを悟った鷹の目は、ベルカを元いた石床に起き、自らは玉座の前に直った。
息の乱れどころか声さえ震わせず、ベルカは粛々と語る。
ベルカ「竜狩りオーンスタインならびに鷹の目のゴー。古竜狩りを怠り、長子の奸計に与した事への罰を、これより汝らに申し渡す」
ベルカ「鷹の目ゴー。今より汝から騎士の位を剥奪し、汝を他の巨人達同様、元の被使役階級に戻す。だがこれまでの功績に免じ、同盟の地たるウーラシールでの隠遁を許す」
ベルカ「オーンスタイン。イザリスの混沌から染み出す毒沼が、日に日にアノール・ロンドへ近づいているとの報は、汝も知るところであろう」
オーンスタイン「………」
ベルカ「故に我ら暫定政府は、汝を古竜狩りの任から解き、新たに王城の護りの任を与えることを決定した。四騎士の長が城勤とあれば、皆々も心安まろう」
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