578:名無しNIPPER[saga]
2019/01/29(火) 07:15:02.29 ID:kYXZ6FAF0
グウィンドリン「コブラ…貴公はソウルを得る時、ソウルの主の記憶を覗き見た覚えはないか?」
コブラ「記憶ね…… そういえば教会でガーゴイルの像を壊した時に、そいつが何処で作られ、何をしていたのかは見たことがあるな」
グウィンドリン「そうか。ならば『物』の記憶を覗き見たことは?」
コブラ「物の記憶?」
グウィンドリン「ロードランも、人界も、この世の全てはソウルが形を成したものなのだ。それは岩や木、剣や盾も例に漏れない」
コブラ「重さのある精神か。ダンカン・マクドゥーガルが踊りだしそうだ」
コブラ「それで、その物の記憶がどうしたんだ?見たことない奴はどうなる?」
グウィンドリン「どうもせぬ。だが、これから私が明かすものを貴公が見るには、物の記憶を覗く素養も求められるのだ」
グウィンドリン「剣を抜け、コブラよ。剣を我が前に」
コブラ「………」
要件をあえて話さないグウィンドリンを疑いつつも、コブラは黒騎士の大剣を暗月の君主の前に差し出した。
疑いを口に出し、問いただしたところで、答えをすんなりと教えてくれる神など、コブラは知らない。
グウィンドリンは黒騎士の大剣を、両の細腕で受け取り、石床に突き立てた。
グウィンドリン「心を鎮め、剣に触れよ。さすれば剣は、貴公に記憶を流すだろう」
コブラ「難しいことを言うなぁ。俺は集中すると煩悩が増すタイプでね」
グウィンドリン「煩悩がもたげるのなら、恐れて想うがいい」
グウィンドリン「死を」
コブラ「!」
グウィンドリンの言葉を聞き、コブラの脳裏に、ある光景が浮かんだ。
追われて彷徨い、夜に弱った身体に振り下ろされる、大きな刃。
斧に左腕を切り落とされる瞬間に、決して濁ることのない恐怖がある。
その恐怖は雑念を喰らう。
恐怖に抗う、密やかな熱い血潮が喰らうのだ。
コブラ「…フフ…流石は神だな。十字架を背負う男への鞭の打ち方が、よく分かってらっしゃる」
グウィンドリン「………」
心を無に沈め、コブラは剣に触れた。
コブラ「!」
その瞬間、知るはずのない思い出が、コブラの中に膨れ上がった。
熱き混沌より生じるデーモンを打ち払う為、鍛えられた大剣。
火に耐える黒き鎧を身に纏う、多くの人ならざる者が、この剣を握り、振るい、消えていった。
そして混沌を制した大剣は、最後の使い手に握られ、使い手は大いなる篝火を目指した。
その目指すところ、大いなる篝火が放った大炎により、使い手は焼き尽くされ、心を喪い彷徨った。
だが、彷徨う者はある時討たれ、剣を奪われ、灰の山となる。
剣を奪った者は…
コブラ「……そうか…見えたぜ!」
コブラ「鍛治の巨人に作られたこの剣が、誰の手を渡り、何を斬ってきたのかが、俺にも見えた!」
コブラ「これが物の記憶か!」
グウィンドリン「拓かれたようだな。その業は、神々の力に揺さぶられた全ての者が持つ」
グウィンドリン「故に神に呪われし不死も、神同様にこれを持ち、神の如く世の由緒を見る」
グウィンドリン「コブラ。貴公にその力を与えたものは、恐らくは貴公の内にある、我らが大王の封印だろう。ならばこそ、暗黒神が器を置かぬ今のうちに、貴公の力を見極めなければならなかったのだ」
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