532:名無しNIPPER[saga]
2018/10/31(水) 18:17:53.77 ID:DRMKFrEu0
暗闇に落とされ、音も無く、触るものも無い。
呼吸はできないが苦しさは無く、四肢は動かないが寒さも暑さも無い。
コブラ「………」
コブラは無を漂っていた。
進む事も戻る事も、止まる事も無い処。
それも、前に彼が経験した無とも異なる。
肺はホルンとならず、心臓はドラムを打ち鳴らさず、血潮は踊らない。
エイトビートは沈黙している。ロックは聞こえないのだ。
コブラ「………」
コブラ「……?」
その終わりさえ無い無の世界に、コブラは一つの小さな輝きを見出した。
視力さえ与えられない世界においては矛盾する現象だが、彼は確かに見ているのである。
青白い輝きは徐々に大きさを増し、輝きが増すごとにコブラの五識は一つ、また一つと回復していく。
回復した五識は思考に作用し、輝きがコブラの眼前に止まる頃には、遂にコブラは温度感覚を除いた心身の機能を完全に取り戻していた。
コブラ「キミは……」
無重力の世界で、巨大な青白い輝きは宇宙を内包し、少女の空気を纏っている。
その空気に右手を伸ばし、コブラが光に触れようとした瞬間…
コブラ「!!」
空気は一変し、輝きは消え、コブラの前には少女ではなく、緑の眼を持つ白き柘榴が現れた。
柘榴は触手を伸ばし、差し出されていたコブラの右手を絡め取ると、無を飛翔し始める。
その無の世界も、コブラが冷たさ無き風を感じる毎に薄れていく。
そして突如、世界は閃光と共に無を失い、真白い光に満たされたのだった。
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