526:名無しNIPPER[saga]
2018/10/28(日) 23:21:46.74 ID:UMai37RN0
不死達は一様に絶句し、黒い外套の男と長く時を過ごしたであろう神々すら、己の眼を疑った。
人の世にも不死の世にも、神の世にさえも、伝承の怪物という語り尽くせぬ者、触れ得ざる者の存在がある。
人の国アストラを襲ったと言われる、邪悪な眼を持つ怪物。
並行世界を渡り歩いたと伝えられる、白い殻に蟹挟みを覗かせ、光弾を放つ精霊。
小人が見出した、決して暴かれてはならぬ力。
いずれの世においても、それらの真実を知る者は限られ、彼ら知る者の言葉も沈黙と雑言に阻まれ、易々とは広まらない。
故に伝承とは忘れられやすく、曲げられやすく、明確な形をしばしば失う。
故に伝承とは心無い者に広められ、限りも無く弄ばれる。
クリスタルボーイ「まったく、お前はつくづく人を楽しませる奴だよ。まさか宇宙が始まる前の世界にまで出張ってくるとはな」
肉と外套の山から姿を現した者は、その限り無く姿を変えるあらゆる伝承にさえも、全く記録されぬ異物だった。
磨かれた結晶の如き人体に、黄金色の人骨と思しき物を内包するその者の頭は、人頭を模した黄金色に輝く“かぶりもの”であり、感情を伺うことができない。
グウィンドリンを斬りつけた右腕には、その骨格と頭部と同じ輝きを放つ鉤爪がはめられている。
コブラ「そんなバカな……お前は確かに死んだはず…!」
クリスタルボーイ「死ぬのは慣れてる。お前のお陰だよ」
コブラ「クリスタルボーイ!!」シュサッ
ドオオォーーッ!!!
左手に特大剣を握りこみ、コブラはクリスタルボーイへ向けサイコガンを放った。
ガギィーーッ!!
コブラ「!!」
だが、亜音速で飛翔した100キロ超の鉄塊は、クリスタルボーイの胸部に弾き返されて反り返り…
ガシィーン!
コブラの手元へと戻り、サイコガンに収まった。
クリスタル「前の手よりもグレードアップしたな」
コブラ「………」
クリスタルボーイ「だが、こっちも相応に対策はとってある。爪が甘いぞ」
ガゴオォン!! バババババ!!
自己陶酔的に語るクリスタルボーイの背中に、雷纏う十字槍が突き立てられた。
オーンスタインの槍を覆う雷は倒すべき敵を包み、熱と衝撃を迸らせる。
クリスタルボーイ「言っただろう。対策はとってあると」
オーンスタイン「!」
そんな極限環境においても、その敵は竜狩りに顔を向け、話しかけてみせた。
ガキーッ!!
クリスタルボーイの鉤爪は槍を払いのけ、竜狩りの巨体を軽々と舞わせ、壁に叩きつけた。
部屋の隅に座らされたグウィンドリンの手が、力無く長杖に触れる。
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