491:名無しNIPPER[saga]
2018/10/20(土) 12:59:14.23 ID:q3PX0KLY0
ソラール「…ラレンティウス」
ラレンティウス「うん?」
ソラール「クラーグは恐らく、お前に呪術を授けないぞ。資格が無いと言われただろう?」
ラレンティウス「ま、まぁな……いきなり厳しいな。どうしたんだ?そんなこと聞いて」
ソラール「いや、少し気になっただけだ。求める物が目の前にあるのに、手に入らない……そんな苦境を、お前は楽しんでいるようにすら見える」
ソラール「未練は無いのか?」
ラレンティウス「………」
ラレンティウス「うーん…実は俺、別に魔女の呪術が欲しくて旅をしてるわけじゃ無いんだ」
ソラール「?」
ラレンティウス「師事を乞いたのも駄目元さ。というよりは、探求者としての習い性だよ。乞いた時から薄々は気づいていたさ。脈無しだってね」
ラレンティウス「彼女が今種火に何をしているのか、それすら分からないんだぜ?火を授かっても、それでこんがり焼き上がるだけさ」
ラレンティウス「まぁ、そんな能無しがこんな所にまで来ちまったってことは……多分俺は、見て体験さえ出来ればそれでいいんだろうな」
ソラール「………」
ラレンティウス「……なぁ、あんた大丈夫か?欲しいものに近付いているからって、焦ってるんじゃないか?」
ソラール「………焦ってはいない。迷ってるんだ」
ラレンティウス「迷うって、何に?」
ソラール「分からない……分からなくなってしまった…」
ソラール「俺がこの旅に何を求めていたのか……覚えてはいるが、もう見えない。見たいという気が萎えつつあるんだ。それだけを夢見ていたのに」
ラレンティウス「………」
ラレンティウス「…あんたが何を求めているのかは、探求する道が違う俺には分からない。だが分からないなりに忠告するぞ」
ラレンティウス「呪術師は火を求め、敬い、恐れる。育てはするが、身は投じない」
ラレンティウス「かねて火を恐れたまえ。これは望みし物の素晴らしさ、その輝きに自分を焼かせるなという呪術王ザラマンの警句だ」
ラレンティウス「あんたの役に立つかは分からないが、覚えておいて損は無い言葉だと思うぞ」
ソラール「………」
ラレンティウス「じゃあ、俺は戻ってるからな。ここで見たものを書き記しておきたいんだ」
ラレンティウス「またな」
ソラール「ああ」
ラレンティウスは去ったが、ソラールは封印の前に残った。
しかしソラールの視線は門から離れ、伏せられている。
太陽の戦士は地面を見ず、足先も見てはいない。
何も視界に入っていない。その胸に描かれた、太陽すらも。
ソラール「かねて火を恐れたまえ、か」
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