37:名無しNIPPER[saga]
2016/09/16(金) 04:48:25.12 ID:arCyxKGf0
遥か彼方の世界に、ラグボールという競技がある。
いにしえから連綿と受け継がれし二つの球技を、宇宙的複雑さに至った人種の誰しもが享受しえる形に縫合し、先鋭化させたもの。
それはスポーツと呼ばれた娯楽の中でも一際過激であり、死人が出てさえも観衆は冷めず、競技者は情熱的な熱波となるものだった。
コブラはその球技を知り、楽しみ、そして参加の経験を持っていたからこそ、迫る鉄の猪に対しても冷静でいられた。
死を恐れぬ荒くれ者は、少なくとも凶暴さと重武装を兼ね備え、なおかつ上回るのだから。
コブラ「バッターコブラ、ボックスで構え…」ザッ!
アーマードタスク「ブゴオオオオオオオオオオオ!!」ドドドド!
ラグボールにはバッターという役割がある。
敵から放たれた豪速球を金棒で跳ね飛ばし、球が中空を舞っている間にバッターボックスから離れ、塁を制し、得点を手にする役割だ。
そのバッターボックスに立っている以上、欲深なコブラが狙う得点は鉄の猪である訳がなかった。
ホームランをかっ飛ばせば、余裕を持って塁を回れるのだ。
コブラ「もらったーーーッ!」
ズガーッ!!
コブラが渾身の力で振ったバットは、銀色の弾丸の額に命中し、大きな火花を散らした。
瞬時に絶命したアーマードタスクにとって不幸だったのは、コブラの振った得物が競技用に小型化されたバットではなく、芸術の域にまで鍛え上げられた、重量100キロを超える巨大な鉄塊だった事だ。
猪の頭は針を刺された水風船のように炸裂し、猪の身体は塁に飛び込むバッターのように地面を滑り、槍を構えた亡者を轢き潰した。
鉄塊に打たれた獣牙の鉄兜は弾け飛んで、遠くの門番へ向かって飛んでいく。
門番の亡者「!」
門番は飛来する鉄兜に気付き、門を開閉するレバーに手を伸ばしたが…
グシャアァァ!
下顎から上を散らされ、息絶えた。
コブラ「へへへっ、また客席を抜いちまったか」
ソラール「なん……なんと剛力……何をすればこのような膂力を?…」
コブラ「知らないね。少なくともサプリメントのお陰じゃないぜ」
レディ「……」ヒュッ!
グサグサッ!
コブラ「あっ」
狙撃亡者達「……」ドサドサァッ
レディ「気を抜いちゃダメよ二人とも」
コブラ「スマンね。ついうっかり」
ソラール「今のは…?」
レディ「この猪の兜が弾けた時、牙が二本転がってきたから、丁度いいと思ったのよ」
ソラール「…………」
ソラール(猪の牙を投げつけて亡者を倒すとは……先ほどの騎士への立ち回りといい、なんと出鱈目な戦い方だ)
ソラール(それに、このコブラという男の力…人間のものではない。伝承にある勇者達、もしくは彼の王の騎士達の残した伝説に比肩し得る)
ソラール(断じてただの呪術師などではない。呪術に頼る者には腕力は不要なはずだろう。逆も然りだ)
ソラール(何者なのだろうか……)
ソラール(…いや、何者であろうと構わない)
ソラール(今まで俺を導いた太陽が、恐らくまた導いているのだ)
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