334:名無しNIPPER[saga]
2018/01/19(金) 16:44:53.95 ID:MTllhXRC0
「………」
二階には、人を十人纏めて叩き潰せるほどに巨大な鎚を背負い、石床にあぐらを掻く巨体があった。
竜狩りのそれと同様に黄金色の鎧を身に纏っているが、その者は脚も胴も腕も太く、兜はそれらと比べ小さく、人型としては歪だった。
瞳は鎧に隠れており、外から表情を伺うことは出来ない。だが竜狩りには確かに、その者の心の震えが届いていた。
オーンスタイン「処刑者スモウよ。暗月の姫君は良しとは言わぬ」
処刑者スモウ「………」
オーンスタイン「それに、お前に討てる相手ではない。何故王がお前を終に騎士へと加えなかったかを考えよ」
オーンスタイン「技や戦果が足らぬからでも、愚鈍であるからでもない」
オーンスタイン「お前も知る通りだ」
スモウ「………」
処刑者と呼ばれた巨躯の神は、掻いたあぐらに置く掌を拳へと変え、今にも迸らんとする衝動を堪えている。
スモウは愚鈍で誠実であった。王から賜った使命を頑なに守り、血肉に飢えた殺戮者の誹りを受けてもなお、彼らに彼らの望むままを決して行わぬほどに。
竜狩りオーンスタインは、装飾窓の外にいる、今ここに向かって来つつある者達を思う。
幾人かの不死が手を組んでいる事が分かるが、そこに混じる正体の掴めぬ輝きに、竜狩りの意識は向けられている。
己の支える主にならば、あるいは輝きの中にあるものを覗き見ることが出来るかもしれない。
だが、それは不死達が法官の毒牙を掻い潜り、試練としての竜狩りと処刑者を斃し、主の姉君に謁見すればの話である。
何があろうと、主の眼を通して己が見定める事は出来ない。それは畏れ多いことでもある。
竜狩りはそう結論づけ、そして新たに決意する。
オーンスタイン(ならば闘いで計るまで)
装飾窓から差し込む陽光に照らされ、竜狩りの纏う金獅子の鎧は、刺すような輝きを放っている。
それは、己の身命を賭して、使命を得るに相応しいかを見極めんとする、捨て身の闘志のようだった。
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