246:名無しNIPPER[saga]
2017/04/14(金) 00:59:08.68 ID:ZtOv7Aan0
ソラールの提案に従い、一行は祭祀場へ戻る。
祭祀場は一見すると何も変わっていないように見えたが、それも遠目に見た限りのものである。
少なくとも二つ、決定的な違いがあった。
レディ「!? なんなのこの臭い!?」
戦士「うわ臭えっ!なんだこりゃ!」
コブラ「俺たちが留守してる間にトイレでウンコしてそのまま流さなかったヤツがいるな」
一つは、祭祀場に漂う悪臭。
それも瑞々しい生腐りのものではない、埃を被り、年季の入った古い腐臭。
それは空気の流れに乗り、祭祀場の遺跡の奥から漂っていた。
ラレンティウス「俺が見てこよう。大沼より少し臭い程度だ。死にゃあしないさ」
呪術師ラレンティウスにとって、その悪臭は故郷に通じるところがあった。
臭いの出どころを確かめるという理由はあったが、孤独を好む彼も、永い旅の中に郷愁を見出していたのだった。
ソラール「おい見ろ!篝火が!」
グリッグス「なっ…まさか…」
二つ目の異変は、篝火の鎮火だった。
戦士「おいちょっと待てよ…こりゃねえよ…」
ソラール「火が消えている。誰がこんな事を…」
コブラ「水を掛けたヤツがいるってことか」
グリッグス「水を掛けたぐらいでは消えないが、それらしい事をやった者はいるだろう」
コブラ「それらしいこと?」
グリッグス「ああ。一つの篝火には一人の火守女がつく。その火守女を殺すか、それとも力を奪うかすれば、篝火は消えるんだ」
コブラ「なるほどねー……しかしおかしいぜ。篝火に用があるヤツは不死人だけなのに、その篝火を誰が消すってんだ?この地にいるのは俺とレディを除いてみんな不死人ばかりのはずだ。そんな中で火守女を殺したとあっちゃあ、殺したヤツ本人も面倒をおっかぶる事になるはずだぜ?」
グリッグス「そこなんだ……火守女を殺したとしても、得られる人間性は高が知れているし、エストの補給も出来なくなる。ソウルにも期待は出来ないはずなんだ……一体なぜ…」
戦士「クソッ!篝火下の牢を見て来たが、やっぱり火守女が殺されてやがる。ここはもう終わりだ……」
コブラ「下の牢に人がいたのか?そりゃあ気づかなかった」
ソラール「気づかんのも無理はない。宗教者達が主に火守女をロードランに送り、彼女ら全てが目を埋められた生娘達ではあるが、教義によっては、火守女は動くことも話すことさえも禁じられると聞く。少なくとも『白教』という宗派はそうだったらしい。遥か昔の、忘れられて半ばおとぎ話となっている物語によればな」
コブラ「酷い事をするもんだ。そんなんだからおとぎ話になるのさ」
ラレンティウス「ウオオオオオーーーーッ!!」ダダダダダ…
コブラ達が消えた篝火を囲んでいると、悪臭の正体を突き止めたラレンティウスが、必死の形相で走ってきた。
全身から漂う悪臭は、彼が止まった拍子にあたりにばら撒かれ、コブラ達は顔をしかめた。
コブラ「本当にひどい臭いだな。肥溜めでも近くにできたのか?」
ラレンティウス「そんな事言ってる場合じゃない!ここから逃げるぞ!」
ソラール「逃げる?なぜだ?」
ラレンティウス「口のでかい巨大な竜が奥にいるんだよ!臭いの元はそいつだった!」
悪臭に、でかい口に、巨大な竜。ラレンティウスの言葉に嘘は無かった。
しかし、彼に不死の使命に対する熱意がなかったからだろうか。焦りが言葉を飛ばしてしまったのか。それともその両方か。
言葉の真意は歪められて皆に伝わり、旅の一行は口に出さずとも理解した気になってしまった。
谷底にいる貪食な巨竜が飛竜共を食い尽くし、祭祀場にまで登り詰めつつある、と…
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