182:名無しNIPPER[saga]
2016/11/11(金) 16:22:41.67 ID:TepObGIC0
黒騎士の特大剣には、ある加護が元より施されている。
加護は際立って強いという訳でもなく、時の経過で半ば力を失っている。
しかし残滓を残すのみとはいえ、この特大剣は熱の類を寄せ付けず、溶岩にすら溶け込まない、ある種聖剣とさえ言える遺物なのである。
コブラはもちろん剣に施された術の存在など知らない。しかし、コブラには加護がもたらされていたのだ。
キュルルル! ボボォン!!
最高出力でワイヤーを巻き取るリストバンドに牽引され、コブラは溶岩の上をサーフィンし、跳ねた。
ブーツの裏は熱で溶けはじめていたが、その融解がブーツと剣を癒着させ、コブラだけが魔女に向かってすっ飛んでいく事態を防いでいた。
しかし、断熱加工が施されたブーツとはいえ、靴裏が溶けるほどの熱をカットし続ける事は出来ない。
ドカーーッ!!
クラーグ「!!」
コブラの体重が乗った特大剣は、クラーグの蜘蛛の腹部を飛び越し、クラーグの人としての腹部を、背中から貫いた。
貫通の衝撃でコブラは特大剣から剥がれて地面に落ち、その顔に血を被った。
バシャバシャバシャバシャ…
灼熱の大剣に貫かれたというのに、魔女の血は熱くなく、炭の香りも発していない。
魔女の負った深手は、魔女からレディを抑えつける力すら残らず奪い去ってしまった。
レディ「コブラ…もうダメかと思ったわ…」
コブラ「ああ、俺もさ」
ドスーン…
蜘蛛の脚は力なく崩折れ、重い胴体を石畳に押し付ける。
魔女は口と腹部から血を吹くと、血まみれの大剣を抜こうと刃に手を掛けた。
しかし、出血と痛みが魔女から力を奪っているため、魔女は剣をひと撫でする事しか出来なかった。
そして失血の勢いが弱まるにつれ、魔女の身体には震えが走りはじめる。
クラーグ「ば……馬鹿な………こんな、ことが……」ガクガク…
コブラ「足元を掬ってやろうと待ち構えるヤツの足ほど、掬いやすいものは無い。いい勉強になったろ?」
魔女は苦痛と混乱に顔を歪ませながら、勝ち誇るコブラに顔を向ける。
だが、もう一度血を吐いた魔女は、コブラ達に大剣の刺さった背を晒して、蜘蛛脚と蜘蛛の腹を這いずらせた。
楕円の両端の一方、魔女が姿を現した石の構造物へ向かって。
クラーグ「はぁ…はぁ…」ズズッ… ズズズ…
コブラ「………」
ソラール「わああああああああああああああああ!!」
戦士「うがああああああああああああ!!!」
ラレンティウス「うおおおおおおおおおおおお!!」
グリッグス「う、うわああああああああああ!」
突然、四人の不死が威嚇ともヤケとも言える咆哮を上げて、楕円形の空間に突撃してきた。
だが彼らの勢いは数秒も持たず、あっという間に沈静した。
戦いが終わった場に戦いは起こらず、恐怖は無いのだから。
ソラール「あ、あれ?なんだ?」
戦士「終わっ……てる、のか?」
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