167:名無しNIPPER[saga]
2016/10/28(金) 19:06:08.57 ID:Hb1zpgYd0
魔女の願いに曖昧な応答を返したコブラは、先を歩いていたレディに追いつくと、四人の不死と共に灰の丘を登り、横穴に入った。
横穴の中は暖かく、壁は白い蜘蛛糸状の粘着物に巻かれた、いくつもの節くれで構成されていた。
ソラールが節くれの一つに触ると、節くれはかすかに脈打った後、冷えて固まり、その様子は蜘蛛糸の存在も相まって、横穴を進む一行に、蜘蛛に捕らえられた虫の断末魔を連想させた。
コブラ「きっしょくの悪い所だなぁここも。旅の勇者をちょっとはもてなせってんだよなぁ」
ソラール「確かに良い気はしないな。この壁は何で出来ているんだ?」
グリッグス「何かの繭にも見えるが…」
ラレンティウス「なんにしても知りたくないね。こういう物には、もう触らない方がいいぞ。何が入っているか知れたものじゃない」
戦士「………」
コブラ「それにしても横穴の先に見えていたのが糸だったとはね。白くてモヤモヤしてるもんだから、てっきり霧かと思ってた」
レディ「案外この先に本当にあったりしてね。ところでコブラ、さっき彼女と何を話して…」
戦士「静かにしろっ、何かいる」シャリッ
列の先頭を歩いていた戦士が、静かに、しかし素早く剣を抜いて構えると、コブラとレディを含めた旅の一行も戦闘体制に入った。
「ううぅぅ……」
道の奥から、うめき声とも祈りともつかない声が漏れている。
音の重なり具合から、複数の何者かがいる事は確かだった。
戦士「俺が先に行く。後から来てくれ」
ソラール「分かった。貴公も気をつけろ」
返事をしたのはソラールだけだったが、その場の全員がすでに身構えている。
戦士は返事を待つ必要も無かった。
ダッ!
戦士は突貫し、声の発生源に向かって剣を振り上げた。
そして一気に振り下ろし、声の主の首を飛ばそうとした。
しかし、戦士は躊躇した。
心擦り減らす過酷な旅とはいえ、敵かも分からぬ無力な者を斬るのには、やはり迷いが生じるのだった。
卵背負いの亡者達「………」ブツブツ…
蠢く大きな節くれを背負い、重みに潰されてもなお、掌をすり合わせ祈ることをやめない亡者達。
衣服はまとわず、卵から伸びた脈動する導管に全身を蝕まれている彼らは、一心不乱に祝詞を唱えている。
だが、無限とも思える時を唱えられ続けたその祝詞は、もはや言葉の体すら整えておらず、聞くものの耳に苦悶の声として届くのも、必然と言えた。
戦士を援護するべく駆けて来たコブラ達も、その様子には閉口し、切りぎりに声を漏らすだけだった。
コブラ「こいつは…」
ソラール「むごい…不死の身にこれでは…」
さらに、その亡者達の外見から誰もが連想する物は、コブラ達をさらに戦慄させ、特に不死達を恐れさせた。
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