166:名無しNIPPER[saga]
2016/10/28(金) 11:12:19.69 ID:Hb1zpgYd0
何かに追い立てられているかのように歩き出した戦士を先頭に、ソラール、グリッグス、ラレンティウスが続く。
毒を持ったぬかるみは依然として病み村の底に沈殿していたが、不思議と四人の動線を避けるかのように、彼らは身をよじった。
炎の魔女の言葉もあるが、竜に泥をすすられた為に量が減った事が、ぬかるみに溶け込んだ亡者に、いくらかの動く自由を与えていた。
黒いローブの女「コブラ」
四人に続いて、灰の丘を目指して歩こうとしていたコブラとレディを、魔女は引き止めた。
コブラはレディを先に行かせると、ズボンのポケットに手を突っ込んで、魔女に向き直った。
それは人の話を聞く時の、彼特有な癖だったが、今は葉巻も無い。
コブラ「話ね。俺との事を考えてくれたって訳でも無さそうだが」
黒いローブの女「ああ、お前の事では無いよ。お前がこれから出会うであろう、私の姉妹たちについてだ」
コブラ「姉妹?そいつはいいな。道中退屈しないで済む」
黒いローブの女「真面目に聞いてくれないか」
魔女は語気を強める事も、叱咤する事も無かったが、コブラは口を閉じた。
彼女の神妙な雰囲気を感じ取ったコブラにとって、その雰囲気が今までどういう時に漂っていたのかなど、いちいち思い出す必要も無かった。
海賊として宇宙を駆け、他人からの頼みを多く受け、また断ってもきたコブラは、彼女が言おうとしている事がロクでもないものであると見抜いていたのだ。
黒いローブの女「かつて私には多くの姉妹たちがいた。だが、母様が見出した混沌の篝火からデーモンが生まれ、そのデーモンの炎から逃れるために、皆離れ離れになってしまった」
黒いローブの女「ある者は焼かれ、ある者は正気を失い、ある者は混沌を宿し、またある者は、混沌の苗床となった母様を鎮めるため、その身を楔へと変えてしまった」
黒いローブの女「おそらく、無事に生き残ったのは私だけだろう。そして、我ら姉妹の今を知る者もな」
コブラ「………」
黒いローブの女「コブラ、お前に頼みがある」
黒いローブの女「私の姉妹たちを、楽にしてやってはくれないか」
コブラは無意識に、ポケットの中をまさぐった。
しかし葉巻は無い。
コブラ「やっぱり殺しか…だと思ったよ」フフ…
黒いローブの女「すまない……本来なら、裏切り者の私がやるべき事なんだ。分かってる」
黒いローブの女「でも、私にはどうしても出来ないんだ…」
黒いローブの女「私はもう…臆病者になってしまっているから…」
コブラ「そんな事言われても俺だって嫌だぜ。俺は海賊であって殺し屋じゃないんだ。悪いが他をあたってくれ」
黒いローブの女「………」
コブラ「おおかた、長く苦しめるくらいなら、いっそのこと…って思ってるんだろうが、そいつは大きなお世話かもしれないぜ?」
コブラ「話を聞いてみりゃ、案外楽しくやってるって事もある。姉妹だからって、向こうが何を考えてるかなんて分からないだろ?」
黒いローブの女「お前は何も知らないから…そんな事が言えるんだ…」
コブラ「ああ知らないね。だが知りすぎているヤツってのは大抵、知っている物をイジりたがらなくなるもんさ」
コブラ「それはあんたも分かってるはずだ。それに、だからこそ俺に頼んだ」
コブラ「そうだろ?」
黒いローブの女「…………」
コブラ「なあに、ちょびっと口説いて、ダメだったらあんたの話も考えるさ」
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