147:名無しNIPPER[saga]
2016/10/19(水) 17:01:19.17 ID:JH/Vb9Yk0
病み村の底、毒素を含んだぬかるみは、糞尿と腐った土だけで形作られてはいない。
大ビルの粘液、大量の虫の欠片、骨、そしてこの世に見捨てられた、数多の弱き不死達の腐肉が、ぬかるみに溶け込んでいる。
ゆえにぬかるみは、いつまでも粘りつき、触れる者を蝕むのだ。
ザボォン!!
竜の足が一歩、水のような音を上げてぬかるみを叩く。
膝下まで泥に浸かった男達の足取りは重く、歩くごとに体力が消耗されていくというのに。
コブラ「はやくしろ!!もう少しだ!!」
コブラの呼びかけに応えるべく、ソラール一行は歩みを早めようと精一杯努力した。
しかし勢いづけて足を振っても、振った方向へのぬかるみの密度が高まるせいで、余計に体力を奪われるだけだった。
ドボォン!! バシャアン!
竜の歩みは無情にも早まり…
クォアアア…
その大口は、四人の真上で開いた。
レディ「コブラ!!もう駄目よ!!」
コブラ「仕方ない!そんなにコイツが欲しけりゃくれてやる!」ジャキン!
コブラがサイコガンを構えると、ドラゴンは大口から剥いた牙の群れをしまい、後ずさった。
何かに怯えるように。
コブラ「へへ、そうかいコイツが怖いか。なんなら早いとこ帰んな。俺も撃たないにこしたこたぁ無いんだ」
緊張して、しかし口元の笑みは崩さないコブラは、わずかに優勢である事に確信を持った。
サイコガンに込められたエネルギーは輝きを強め、コブラの右腕に力が入る。
何者が、その優位を作り上げたのかも知らずに。
「騒がしいぞ」
ぬかるみとも岩壁とも見分けのつかない闇の中から、一人の女が歩み出た。
身体のラインは黒いローブで隠れている。
だがその透き通る声と、気品に満ちた足運びが、見る者にかの者が女であること
それもこの世にあっても稀なる美貌の持ち主である事を確信させたが、その魅惑にはまた、強大な影が纏わりついている事も、見る者達は感じていた。
それは威厳や力、神秘、もしくは業の類である。
黒いローブの女「病み伏す者達を喰らい、哀れな不死どもを喰らうなら、この地の不浄も受け入れたまえよ」
黒いローブの女「竜の末裔たる者には、それが相応だろう?」
コブラと竜の間に立ち、竜の目の前に立った女は静かに、しかし大空間の隅々にまで行き渡る神秘の囁きで、竜に語り掛ける。
竜は一瞬全身を震わせると、低い唸り声を上げて身をちぢこませたが…
貪食ドラゴン「フゴアアアアアアアアア!!!」ゴワッ!
逆上するかのように身体を広げ、黒ずくめの女におそいかかった。
竜の怒りは強く、恐ろしいが、この怒りは一種の行動爆発であり、追い詰められた弱者の振るう最後の抵抗だった。
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