【艦これ】女提督「それはね」
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93: ◆mZYQsYPte.[sage saga]
2016/09/28(水) 07:17:14.34 ID:NBdSDHsho

海軍大臣「ではでは、次官君に海軍声明の草案は任せるとして。何が起こったかを話しましょう」

軍令部総長「責任のやり場を優先して、原因と事態の把握を後回しとはなんとも」

海軍大臣「平時とはこういうものだと思うよ」

軍令部総長「今は戦時だろう」

海軍大臣「感覚が麻痺するほど長い戦時など、平時だよ。もっと言うと、昨日から我々は新たな戦時に突入したのかもしれないね」

軍令部総長「……」


九十九里の観艦式で起こった一連の騒動は世間を賑わせていた。

情報統制を徹底する前に、騒動は深海棲艦との開戦時とは比較できないほど発展した各種SNSを通じたネット上でパンデミックを起こしていた。


・日本の近くに深海棲艦が出たらしい。

・横須賀では陸戦隊1個連隊が臨戦態勢で待機している。

・海中転落で本当は死亡者が出ているのに海軍はその事実を隠蔽している。

・本当は艦娘に戦死者が出たらしい。隠蔽している。

・海軍大臣と総理は何故観艦式に出席していなかったのか、襲撃は予測できていたのではないか。ユダヤの陰謀だ。

・襲撃を何故察知できなかったのか、日本の守りは万全ではなかったのか。



騒動に関して真実が1%、虚実が99%。大元が間違っているのだから正しい判断など出来ようもない。


そこに溢れているのは無力な人間が持ちうる、不満と、疑念と、恐怖だ。


本来ならば一人の感情や内面でしかない筈のモノが、電子の海に放たれる。

黒色をした情報は希釈されること無く、他の者が持つ偏見という名のフィルターに通され濃度を増す。

希望よりも絶望がよく馴染む海。現実と同じだな。

賢く泳いでいるつもりがいつの間にか溺れているマヌケ共め。

そもそも、ネットは自分が欲しい情報しか与えてくれないのだ。

集合知による善意の場などではなく相互監視装置でしかない。

だからこそ軍は……もういい。馬鹿に馬鹿と言っても仕方がない。


俺はたった一つの事実だけ見つめれば良い。

国民の手に再び近づきつつあった平穏な海。

そいつはやはり夢だった、という事実を。



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