90: ◆mZYQsYPte.[sage saga]
2016/09/28(水) 07:09:14.22 ID:NBdSDHsho
夜 千葉沖 駆逐艦カイヨウ CIC
軍令部総長「何がどうなっている!」
怒りで顔を真っ赤にした男が入ってきた。
「詳細については現在交信を続けていますが、比屋定海月と思われる人物を確保しようとし、その過程で転落事故が起こったようです」
軍令部総長「そんなことは今は良い! 敵はどこにいる!」
『敵』
そう、敵が現れたのだ。
「第一管区の45-99、47-78、54-71から水上艦隊目掛け押し寄せています。速さから見て駆逐艦。総数で400を超えるものと思われます」
「同上海域において、警備部隊が交戦状態へ突入」
軍令部総長「戦況は」
「良くありません。突破されつつあります。警備部隊統括司令官より、総長殿に羅針盤起動の要請が入っています」
軍令部総長「起動無しで撃退できないのか」
「艦娘は20程です。押し留めるにも頭数が足りません。空母も夜間着艦は困難です」
相当な権限を委ねられた現場指揮官でもなければ、羅針盤の起動と停止は大本営もしくは軍令部のトップが管理している。
軍令部総長「……起動を許可する。後の戦闘は現場指揮官に任せるぞ」
軍令部のトップとして、彼には少しだけ逡巡があった。
日本近海は安全な海であるという最早誰しもが持ちえる常識。
起動すればソレが揺らぐ。
だが、これ以上民間人及び海軍軍人の犠牲を出すわけにはいかない。
常識が揺らぐ以上に、海軍に傷を残すわけにはいかないのだ。
ここで羅針盤について少し説明しておこう。
羅針盤と呼ばれる妖精の産物は、艦娘と組み合わせ運用することにより効果を発揮する。
要は艦娘と深海棲艦による陣地取りゲームを行うための舞台装置と考えてもらってよい。
起動することによりだだっ広い海域をボードゲームの盤面のように区切り、彼女たちはマスを取り合う。
だだっぴろい海を狭くすることで恩恵を被るのは深海棲艦ではなく艦娘である。
羅針盤によって制限されて困るのは数の多い深海棲艦の方なのだから。
軍令部総長「何が起こっているんだ」
呟くように吐き出されたその疑問に答える者は誰も居なかった。
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