74: ◆mZYQsYPte.[sage saga]
2016/09/12(月) 02:07:24.48 ID:5JwIXqGBo
伊艦推しD「な、なんですか」
「怖がらないで良いわよ。私は価値も無いものを殺しなんてしないから」
伊艦推しD(こいつ……)
「貴方、イタリア艦が好きなのよね。霊装魂って知ってる?」
伊艦推しD「はぁ、まぁ、一応名前くらいは」
予想外の名詞が出て来た。一般人は霊装魂など殆ど知らないだろう。
「ほんと? 嬉しいわ。じゃあ良いこと教えてあげる」
「艤装は人間には使えないのに、艦娘が艤装を使える理由は知ってるかしら」
伊艦推しD「……えっと、艦魂が繋ぐのに役割を果たしていて、艤装を身体の一部のように扱えるって理屈だったと思います」
「ほぼ正解、なんでしょうね。艦魂、正確には形而上の概念でしかない艦としての記憶、微量子的存在であるソイツを均質ベクトル空間における位相と定義しパターン固着する。それを形而下へ霊素として落としこみ抽出した後、艦娘候補者へ限界同調率で移植する。そうすると彼女たちの脳が錯覚を起こして、思うがままに、艦娘は艤装を身体の一部として扱うことが出来る、と思い込む」
「形而下に落としこむなんて簡単に言ってくれる辺り、本当に妖精は神様みたいなものよ。この星の何もかもを観測し続けた妖精だからこそ成し得る技」
「でも結局は身体の一部なんて認識は錯覚。偶然の高い確率での積み重ねなのに、艤装をコントロール出来てると思い込むなんて茶番よね」
「偶然によって99.999999%の確率で思い通りに動くのなら、コントロール出来てるのと変わらないとも言えるのかしら」
「こんな異物、艦魂は人には馴染まない。長期間纏えば自我が壊れる」
伊艦推しD(こいつ、機密である艦娘の製造方法を何故)
「不可思議って顔してるわね。本当はナノマシン体にしか馴染まないものを無理やり人に取り付けているんですもの。ガタは来るわよ」
「ま、私が居ない間に随分と状況が変わったみたいだけど。まさか人間と艤装を組み合わせるなんて。大胆なこと」
伊艦推しD「……霊装魂計画は非人道的な人体実験を繰り返した後、凍結された」
「延期じゃなくて凍結だったのね。見込み薄かしら、これは」
伊艦推しD「友達に艦娘開発史に詳しい奴が居て、色々見せてもらったことがある」
「……」
伊艦推しD「その中に、霊装魂計画の写真もあった。アンタの顔も、あった」
「でもそれだと矛盾しない? 計画の責任者は自殺。私はもう死んでるのよ。それも何十年も前の話」
伊艦推しD「……」
そうだ。比屋定海月は死んでいる。何十年も前に。
「ただの見間違いよ。私に似た顔なんて幾らでも居るもの。錯覚」
伊艦推しD「そう……だな。あるわけ無いよな」
「無いわよ」クスクス
だが、間違いなくこの女だった。陸軍で集めた海軍機密資料の中で、計画責任者として顔写真が載っていた。
「あ、まだ『良いこと』教えて無かったわよね」
なら俺の目の前に居る、この女は何なんだ。
女は男の胸ぐらを掴み、恐ろしい怪力で背の低い自分側に引き寄せ、耳打ちした。
「もうすぐ人は滅ぶ。だから短い余生を無駄なく過ごすことよ……陸軍の優秀な兵隊さん」
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