67: ◆mZYQsYPte.[sage saga]
2016/09/12(月) 01:46:21.83 ID:5JwIXqGBo
国別でブロック形式に別れており、イタリア艦群ともかなり距離は離れているのだが、大きな歓声と拍手はこちらにまで届いてくる。
もうすぐ私の番だ。緊張からか少し鼓動が早まる。
私の反対側に立っているグラーフは、いつも通り落ち着いた表情をしている。
強いな。あいつは。
確かに今は見世物だとしても私は艦として誇りを持っている。
それを犬の誇りだと? 改めてふざけるな、だ。
「お次はドイツからの派遣艦! ビスマルク! グラーフ・ツェッペリン!」
緊張で強張った表情筋を力でねじ伏せる。笑顔を作る。
複数存在する観閲用の水上艦に向け、手を振る。
これも仕事だ。
「フェスト シュテート ウント トロイ ディー ヴァハト ディー ヴァハト アム ライン!」
……私の顔写真が貼り付けられたTシャツを着た男性が、涙しながらラインの護りを熱唱し始めた。
あ、ウォースパイトのTシャツを着た男性に殴られた。
近くの海兵が手慣れた様子で二人を艦内へと退去させた。
ビスマルク「……」
アレじゃもう、二人は今後観艦式への出禁は決定だろう。
観艦式中の他者への迷惑行為はNGだし、決して許してはいけない行為だが。
ビスマルク「……」クスッ
私はわりと嫌いじゃなかった。慕って貰えるのは素直に嬉しい。
それに、ドイツの歌をこの場所で聞けるとは思っていなかったから。
先程より少しだけ自然に笑顔を作り、手を振り続ける。
「そして今回、イギリス艦の皆様にも登場して頂きました〜」
艦列と人の興味が私から遠ざかる。一息つきながら手を振るのをやめた。
争いとは無縁の静かな海に、私は一人で佇んでいる。
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