25:宥咲
2016/08/24(水) 22:38:42.55 ID:zOosj66d0
彼女と会って話をしたのは二回戦の後でした。
日向ぼっこの帰りに迷子になっているのを見つけて話しかけてみました。
迷子という状況だったからでしょうか、涙目で不安を隠しきれない顔でした。
思わず抱きしめて、玄ちゃんにそうするみたいに優しい言葉であやしてしまいました。
その後何とか一緒に歩き回って、目的地まで連れて行きました。
そこで同じ部員を見つけてお礼を言った時です。
その時に、彼女の一番好きな顔を知りました。そしてそれは多分、対局した皆が笑顔になった時と同じ顔でした。
……最初に会って話をした時、彼女は妹だというように感じました。
その翌日も会いました。インターハイの会場の外のベンチで何か考え事をしていたように見えました。
近付いてみると、彼女は見た事のない顔をしていました。
泣いていました。そして震えていて、何かを怖がって、悲しそうで辛そうでした。
近付く私にも気付かずに、ぼんやりとうつろな目で零れる涙もそのままに木陰に座っている彼女は。
この世界からはぐれて浮き出ている幽霊みたいで、暗くて寒い水底にいるみたいでした。
こちらの胸も裂けてしまいそうに痛んで苦しくて、隣に座った私に向ける目は助けてほしいと叫んでいました。
昨日より強く抱き寄せて、落ち着くように背中を撫でて……声をあげて泣く彼女を受け止めました。
いつまでもすがりついて泣き続ける彼女の悲しみや辛さは、一体どれほど深かったのでしょうか。
やっと落ち着いた後も彼女は何も喋れずに、顔だけが何か悪い事をした子どもみたいにごめんなさいと伝えていました。
私は彼女の頭を膝に乗せて手を握っていました。
しばらく目を閉じていた彼女はゆっくりと目を開いて、少しずつ話してくれました。
話を聞き終えてからは、あんまり覚えていません。
ただ私が何かを言って、それに寂しそうに笑って答える顔だけは今でも忘れません。
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