モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」part13
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340: ◆EBFgUqOyPQ[saga sage]
2016/10/18(火) 02:39:22.97 ID:nZ3oq+wSo

『そと?とおいところなの?』

「まぁ……ちょっと遠かったな。でも、大した距離じゃないさ」

 奈緒はウルティマを警戒させないように柔らかい言葉で話すが、それでも内心は戦慄していた。
 目の前の少女は年相応の笑顔で奈緒に語り掛けてくる。だが決してその笑顔は正常ではない。

 濁った瞳は見つめられるたびに不安に駆られるし、長い間動かさなかったであろう表情筋によって構成される笑顔はあまりにもぎこちない。
 すべてがその場で繕われたような表情であり、中身である人格というものを感じさせない、文字通りの『からっぽ』であった。

 奈緒はそんなウルティマに若干の恐怖を抱きながらも相対する。
 それは彼女自身が、この闇から目をそらしてはならないことを知っているからだ。
 ありえたかもしれない自分の姿から目を離してはいけないと、そしてその上で次は自分がこの少女を闇から救うのだと。
 かつて自分が救われた時のように。

「なぁ、奈緒ちゃん。ここは寂しいだろ?」

 奈緒は自分の名前で相手を呼称することに若干の気恥ずかしさを感じるがそこは堪えて、ウルティマと対話する。
 この殺風景な遊園地の真ん中で、永遠に空腹にあえぐ少女を連れ出すために。

「誰もいない。空は暗い。遊園地は動かない。こんな何一つない世界にたった一人で閉じこもるのは辛くないのか?」

『……うん。さみしい。くるしい。だれもいなくて、からっぽだから、あたしはずっとおなかがへってるの』

「ああ、そうだろうな。あたしも前に、寂しくて泣きそうで、ずっと満たされなくてお腹が空いていた」



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