モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」part13
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293: ◆EBFgUqOyPQ[saga sage]
2016/10/18(火) 02:09:15.22 ID:nZ3oq+wSo

(あたしは、ここにいる。

だけど、あの声は、あの姿は、あたしのものだって直感で思った。

理由はわからないし、今だって理解もできない。だが考えを否定する気にはならないし、あたしだからこそそれが決定的に間違っているなんて言えないんだ。

鏡の中のあたしを見たような感じで、その泥が、その咆哮が、あたしの向こう側であることが確信できる)

 世の中には同じ顔を持つ人間は3人はいるとはよくいう話ではある。
 だが客観的な判断、仮に無作為に選んだ100人にあの『カース』と奈緒を比較して似ているか尋ねてみよう。
 おそらく、大半の者は否と答えるはずだ。そもそも泥に覆われている『カース』と少し獣的なパーツの付いている少女を比較して似ているなどと言える者は眼球が腐っているに違いない。
 だがその一方で、こうも答える者はいるだろう。
 共通する部分はあると。
 そもそも奈緒はカースと似たような泥を能力として行使するし、その『カース』の声色は音域的には奈緒の声とそう外してはいないと思えるだろう。
 しかし、所詮はその程度の相似点。決して似ているなどと断ずるものはいないし、そもそも二つが同一人物などと言えるはずがない。
 仮にその『カース』の泥を剥げばその中身に同じ貌が存在するかもしれない。その程度の推理しかできないだろう。

 だが奈緒はあの『カース』を自分だと判断した。
 それはあまりにも不確定な想像でしかないし、客観的な証拠もないただの直感である。
 しかし直感というものは存外馬鹿にできるものではなく、真に迫るものならば十分に『答え』に引っかかりさえする高度な処理能力だ。
 この場においても、奈緒のそれは決して間違っているものとはいえないかもしれない。

 だが、やはりこの直感によって奈緒に与えられた情報は現状ただ迷いを生むだけしかなかった。

「――っ……しまっ!」

 それはほんの一瞬目を離しただけだ。
 時間にして十数秒程度だったが、奈緒を戦況から置き去りにするには十分すぎる時間であった。



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