モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」part13
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269: ◆EBFgUqOyPQ[saga sage]
2016/10/18(火) 01:54:16.95 ID:nZ3oq+wSo
 砂嵐は脳内に蔓延り、視界不良は依然続く。
 断片をつなぎ合わせた記憶は、遥か過去のようなものの気がして直視する気にもならない。

 まるで数年放置され虫に食われ尽くした穴だらけの新聞のようなモノクロは、あたしにとっては価値を理解できないほどに擦り切れてしまっていた。

『……クスクス、クスクス』

 そんな不明瞭な情景で、どこからともなく聞こえる小さな笑い声。
 無邪気な声色のそれは、嘲笑されているようで、にもかからわずなじみ深い嫌悪感の少ない印象をあたしは抱く。

『なお、なお。かわいいなお。かわいそうななお』

『知らない頃に連れ去られ、何処とは知らない檻の中』

 砂嵐の中笑い声と共に聞こえてくる歌声は、ざりざりとあたしの頭の中をひっかく。
 歌声は脳の中をかき回し、不快感にを与えるが、それに比べ苛立ちは少ない。
 不明瞭な視界の中で付いているのか定かでないあたしの脚は、ごく自然にその歌声に引き付けられるかのように歩き出す。

『まっしろいおさらのうえ。なおはおさらのうえの、おりのなか』

『ナイフとフォークを持って、みんなは奈緒を見てる。食器を交差させて奈緒を見てる』

『ああ、なお、なお。かわいそうななお。かわいいなお』

『今からわたしは食べられてしまうのね。かわいそうで、おいしそうな奈緒』

 笑い声は大きくなることはない。しかしその数は次第に増えて、あたしの四方から絶え間なく聞こえてくる。
 歌声は依然響く。あたしに語り掛ける歌は、あたしの脳をまだかりかりとひっかいて不愉快だった。



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