モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」part13
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186: ◆GPqSPFyVMNeP[sage saga]
2016/06/17(金) 22:30:19.75 ID:Lzf9MzY5O

 傷口から噴き出した血が重油めいて燃える。バーニングダンサーは静かに呼吸を整え、女神像カースの胸をチョップ突きで貫いた。

「……ごめんなさい」

 洋子は俯き、声を震わせた。引き抜いた手の中で、小さな球体……カースの核が二つ、燃え尽きて崩れ去った。
 女とカースの結びつきはあまりに深すぎた。シュウシュウと異臭を放つ煙とともに、黒い泥が霧消していく。女には両腕と、腰から下がなかった。もはや助かるまい。

「あ……ぁあ、悔しいなぁ……これで全部、オシマイ……取り戻すことも、掴むことも……」

 今や女の素顔が露わだ。岩塊めいて土色にひび割れ、赤い肉が覗くほど変形したその顔は、何らかの薬物被害によるものか。然り、彼女はこの悪徳商法の被害者であったのだ。
 ……その時、洋子は信じがたい光景を目の当たりにした。依って立つ感情を聖炎に焼かれ、命尽きたはずの黒い泥が、女の顔を這い進んでいくではないか。
 失われた美を埋め合わせ、取り戻させんとするかのごときその様は、己を産み落とした哀しき復讐者への最期のはなむけであったか。

「……キレイ」

 洋子は無意識に呟いていた。黒い泥で土色をつなぎ合わせた顔に微笑を浮かべ、復讐の女神は静かに消え去った。洋子は両目の周りに付着した白い灰を、右手の甲で乱暴に拭った。

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