モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」part13
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11: ◆GPqSPFyVMNeP[sage]
2016/05/07(土) 10:06:31.73 ID:AfaEDJBVO

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「プロデューサー、何か分かりました?」

 口いっぱいのヤキトリを飲み込んだ洋子は、黒衣Pの情報端末を覗き込んだ。端末は黒子ヒーローマスクと有線接続され、先の戦闘の映像記録を解析する。
 洋子の問いに黒衣Pは頷き、端末を突き出した。コンマ1秒で刻まれた映像がコマ送りで流れる。洋子に群がるカースにエボニーコロモが発砲するシーンだ。
 あるコマで突如、黒い何か……否、今やその形をはっきり知ることができる。大きな黒いオオカミが現れたのだ。一体どこから?
 洋子は数コマ戻り、信じがたい光景に息を飲んだ。黒いオオカミはエボニーコロモが放った銃弾の、鋭角な先端から出現していたというのか!?
 黒いオオカミは実時間にして1秒と経たぬうち、忽然と姿を消していた。エボニーコロモが銃を放り出す前に撃った、最後の1発の先端に飛び込んで。

「……な? ワケ分からんだろ」

 黒衣Pは頭を抱えて呻いた。その体表の質感から、黒いオオカミもまた何らかのカース存在であろうことは疑いようがなかった。
 何故カースがカースを狩り、天敵たり得るヒーローを救ったのか? 『憤怒の街』で交戦した人狼カースとの関連も疑ったが、黒いオオカミは怒りとは別の感情で動く別存在のようだった。
 そして、黒いヤギのカース。炎の踊り子装束を纏う前とはいえ、洋子の能力を完封したカースを生み出した存在。同等、あるいはそれ以上の力を持っているに違いない。

「あのオオカミが敵じゃない保証はない。クソヤギも、放置すればあの厄介なカースをまた生み出しやがるだろう。最初に手をつけるべきは……」

「まずはポテトですね!」

 洋子は黒衣Pの口に塩気の不均一なシューストリングポテトの束を押し込んだ。抗議の眼差しを意に介さず、串に刺さったカラアゲを握らせる。

「モッ……フゴッ……洋子、何を」

「せっかくの休憩時間なんだから、しっかり休みましょう! 他の警備スタッフにも注意喚起はしたんでしょ?」

「そりゃ、したはしたけどな」

 黒衣Pは言葉を切った。実際、この休憩時間は秋炎絢爛祭を初めて客として楽しむチャンスなのだ。アイドルヒーロー時代のリベンジを優先しても罰は当たるまい。

「……そうだな。どのみち、時間になったらイヤってほど仕事だ。よォし、食うぞ!」

「そうと決まれば!」

 洋子はニッと笑い、相棒の手を引いて歩く。去年まではウンザリさせられるだけだった人ごみに心躍らせる己を、黒衣Pは自覚した。
 ……洋子は黒衣Pの肩越しに、校舎の屋上を見た。口にこそ出さずにいたが、カースを殲滅した後、二人を監視するかのごとき存在がそこにあった。
 『ニャルラトホテプ』あの時ヒノタマはそう呼び、激しい敵意を燃やしていた。洋子は聞こえないフリをし、黒衣Pに休憩を求めた。
 端末のデジタル時計表示は11時30分。休憩時間は13時までだ。洋子はそれきり、ヤギカースもオオカミカースもニャルラトホテプも、ひとまず忘れることにした。


【続く?】


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