83: ◆/D3JAdPz6s[saga]
2016/05/27(金) 22:50:10.31 ID:aj4xDXo6o
男が少しオーバーな動きで手を振っている。
笑っている、とジュプトルは目をこらして想像した。
動作と笑顔が自分たちに向けられているのは、遠目にも明らかだった。
ところで、彼にはこちらが見えているのだろうか、とも思う。
強い太陽光に燃やされて、人影もなんとなく滲んでいる。
空気も熱ければ、光だけでも熱い。
気持ちのいい風も吹いてはいるものの、涼しいとはお世辞にも言えなかった。
『もう少し時季が変われば、多少は過ごしやすくなる。』
実際は遥かにたどたどしい言葉遣いだが、ダゲキは毎年そう言うのだ。
もっとも、ジュプトルにとって、暑さはそれほど不愉快でもない。
むしろ、寒くなると動きが鈍ってしまうから、ありがたいくらいだった。
ミュウツー『あの小さい、孵ったばかりのポケモンはどうした』
ヨノワールは黙って腕に何かを抱えるしぐさをした。
ミュウツー『……そうか』
樹上のジュプトルは、足元の友人たちを眺めた。
ミュウツーとヨノワールは、大きな図体を必死で縮めている。
ジュプトルには、それが無駄な努力に思えてならない。
身を隠そうとする一方で、ねちねちと顔を覗かせているのだから、世話はない。
別の場所を見る。
彼らよりやや低いところにある青い頭が見えた。
ダゲキもまた、人間のいる方をじっと見ている。
ジュプトル「おい、だいじょうぶか」
ダゲキ「うん……」
声をかけても、ダゲキは心ここにあらずといった面持ちだった。
昨日からずっとこうなのだ。
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