387: ◆/D3JAdPz6s[saga]
2023/08/29(火) 22:54:13.09 ID:Bxagxrqso
今日は妙な日だ。
そわそわして、理由はわからないが落ち着かない。
日課の走り込みも珍しくあまり身が入らなかった。
だから、普段の六割ほどでトレーニングを切り上げて戻ったのだ。
ポケモンたちも少し――いやだいぶ不満そうだったが、仕方ない。
誰の姿もない道場の中央に腰を下ろし、努めて静かに呼吸する。
窓も出入口も開け放っているのに、そよとも風は吹かない。
板張りの床は磨き上げられ、昼前の切り詰めた強い日差しが落ちている。
今いる位置も日陰なのにサウナのように蒸し暑い。
空気がまるごと熱いゼラチンの塊になっているような気がした。
いつもならば、こうしていれば精神のざわめきもいずれ鎮まるはずだった。
それは、こんなふうに暑苦しい日も、寒い冬の日も変わらない。
だが今日に限って、一向に平静を取り戻せる気配はない。
それどころか、神経を逆撫でする厄介な記憶が次から次へと思い出される。
どれも行方知れずな師匠に関連する記憶ばかりだ。
彼と出会ったときのこと。
勢いよく勝負を挑み、あっけなく負けたときのこと。
理由は忘れたが褒められて、思いの外、むず痒い思いをしたときのこと。
初めて勝ちをもぎ取ったときのこと。
これでは落ち着くものも落ち着かない。
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