296: ◆/D3JAdPz6s[saga]
2018/04/09(月) 00:42:12.22 ID:pdxvH6grO
大声を出したせいか、ジュプトルは緊張ぎみにこちらを見上げている。
このジュプトルと初めて顔を合わせたときのことは今も忘れていない。
たしか、今日のようにダゲキに引き摺られてやってきたのだ。
当時のジュプトルは今より更に痩せこけていた。
進化して間もないようだったが、それにしては状態が悪かった。
彼らは栄養状態の善し悪しが皮膚より葉に出るから、そこを診る。
頭や尾の葉は色褪せて艶がなく、絵に描いたような栄養失調だった。
体力はすっかり落ちているはずなのに、声を嗄らして威嚇する姿も印象的だった。
目は敵意にぎらぎら光り、人間への不信感や憎悪を隠そうともしない。
連れてきたダゲキに対しても態度はあまり変わらない。
擦れた声で喚き散らし、爪を振り回していたものだ。
ダゲキが顔に引っ掻き傷を作って姿を見せたこともある。
それもこのジュプトルにつけられた傷だったはずだ。
そのジュプトルが、今日は不思議なくらい穏やかにしている。
コマタナにしたようにそっと顔を掴んでも、今日は引っ掻いてこない。
本当は跳んで逃げ出したいのを我慢しているのかもしれないが。
ダゲキの足に爪を引っ掛け、かろうじて踏み止まっている。
相も変わらぬ貧相な姿は、何度見ても心が痛む。
それでも以前と比べればよほど肉付きもよく、色艶もいい。
レンジャー「……元気にしてたんだなあ」
そう声をかけると、返答に困ったのかダゲキを振り返った。
だがダゲキは何も言わず、黒く淡々とした目で見つめ返すだけだ。
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