291: ◆/D3JAdPz6s[saga]
2018/04/09(月) 00:29:22.15 ID:pdxvH6grO
重い羽毛布団のような暖気に、意識も飛びかける昼下がりのことだった。
昼食はすませたがまだ休憩は残っている、という中途半端な時間帯。
レンジャーの若者は、今にも眠気に負けそうになっていた。
どちらかというと気絶に近いかもしれない。
やや軋む椅子の背もたれに身体を預け、ぼうっとしていた。
すると、こつんこつん、と硬そうな音が聞こえた。
あともう少し意識が遠のいていたら聞き逃してしまいそうな、かすかな音だ。
レンジャーはぎくりと顔を上げ、息を潜めた。
誰かが扉か壁をノックしたことを理解したからだ。
息を呑み、次の音を待つ。
そうしている間にも、頭だけはどんどん覚醒していった。
いったい、こんな時分に誰がヤグルマの森のレンジャー詰所を訪れるというのだ。
こつん、と今度は少し弱々しい音がする。
反応がないから不安になっている、ということなのだろうか。
レンジャー「は、はーい……?」
音がやむ。
まだ動かずに様子を窺う。
緊張のせいか首の皮が痛い。
きゃきゃきゃ、と硬い床板を蹴る音が足元を通じて伝わってきた。
体重の軽い何者かが、忍び足で遠ざかっていく振動に聞こえる。
少し離れたところでごしょごしょと誰かが囁き合う声。
レンジャー(……??)
このまま出てこないと思われてしまうのも不本意だ。
爪先立ちでドアに近寄り、音をさせないようにノブを捻った。
だが努力も虚しく、年季の入った木製のドアはけたたましい鳴き声を発して開いた。
469Res/395.47 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20