ミュウツー『……これは、逆襲だ』 第三幕
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279: ◆/D3JAdPz6s[saga]
2018/02/06(火) 23:58:22.16 ID:lFQ6Uf7qO

ふわっ、と周囲の風が渦巻いて、頭から生えた葉がばたばたと揺れた。

ジュプトルはそっと目を開ける。

博物館を発ってずっと目を閉じていたからか、視界は黒くゆるんでいる。

すぐにじわっと焦点が合っていく。

それでも世界はまだ薄暗い。


いつのまにか、ずいぶん低いところまで降りてきたようだ。

真っ黒に茂る葉は頭上にあり、その隙間から星と月が見えている。

白っぽく沈む木々の幹が目と同じ高さにあった。

いくらか見慣れた景色に、ジュプトルは胸を撫で下ろした。


ジュプトル(やっと かえって きたんだ)

ジュプトル(……やっぱり、たかいとこ こわいなあ)

ジュプトル(みんな なんで、へいき なんだろう)


あの高度からの景色は、思い出すだけでも少し足が竦む。

なぜか往路よりかなり高いところを飛んできたのだ。

いつも跳び回っているはずの木々が、一枚の黒い絨毯のように見えた。

飛び移る枝も岩場もない。

空を飛べる友人の背中にしがみつかなければ、来ることもできなかった。


そこからの光景を自分の目で見ていたことが今も不思議でならない。

たちの悪い夢から覚めた時の、あのなんともいえない気分に似ている。

肌触りは妙にいいのに、不愉快で恐ろしくて、嫌な汗をかく夢。


間もなく、ミュウツーが無言でゆっくり着地した。

渦巻いた風が空気の球になり、それに包まれて地面に降り立ったような感じだ。


目を細めて下を向くと、地面に触れた友人の足先が見えた。

その足を中心に、丸く草が押しのけられて激しく揺れている。

目に見えない球が草を押し退けているのだ、とジュプトルは理解した。


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