165: ◆/D3JAdPz6s[saga]
2017/01/25(水) 01:47:18.91 ID:UMm5BcIdO
にもかかわらず、殺伐とした気配が、たしかに鼻先を吹き抜けた。
口角が勝手にきりきりと吊り上がる。
しばらくすると、不穏で甘美な匂いはすっかり消えてしまった。
残り香を惜しむように深く息を吸い、バシャーモは喉の奥で小さく笑う。
これは、きっともうすぐ、“楽しいこと”が訪れるという予感だったに違いない。
目前の生死だけに集中せざるを得ない、ぎらぎらした素晴らしい瞬間がやってくる。
これはその前触れなのだ、と奥底で錆びついていた本能が歓喜している。
そのときは、そう遠くない。
バシャーモは根拠もなく、そう確信した。
眠るのをやめ、ふらふらと立ち上がる。
何を求めて歩き始めたのか、自分でもよくわからない。
バシャーモは、暗い森の道を目的地もなく進んだ。
ときおり、草むらでがさがさと音がする。
呑気な夜行性のポケモンに違いない。
そちらに首を向ける。
だが彼らは、ぎょっとして逃げていく。
戦いたいのに。
つまらない。
お前らだって戦いたいんじゃないのか。
残念だ。
臆病者め。
喉の奥でくくくと笑う。
うふふ、と音が漏れる。
これではまるで人間だ。
人間が笑っているのと変わらない。
そう自嘲し、バシャーモはもう一度、けたけた笑った。
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