112: ◆/D3JAdPz6s[saga]
2016/08/21(日) 00:33:33.77 ID:HsthgRdno
月明かりも弱い灰色の部屋で、スタンドライトだけが煌々と周囲を照らしている。
ゲーチスはその下で紙の束に目を通しているところだった。
読んでいるのは、部下に命じて集めさせたイッシュ内の調査報告だ。
別の地域に送り込んだ部下もいるが、そちらからはまだ届いていない。
任務は終えたとの連絡は受けているため、成果が届くのもそう遠い未来ではないはずだった。
ゲーチスはついに、その分厚い束をデスクの上に放り投げた。
ずっしりと重さを感じさせる音と共に、紙はぬるっと崩れながら動きを止めた。
頬杖をつき、椅子を軋ませて姿勢を変える。
たったいま放り投げた資料の文字を、ゲーチスはふたたび目で追った。
一番上に、『ヤグルマの森』に関する報告が見えている。
広さ、気候、特徴、判明しているポケモンの分布、その他もろもろ。
ゲーチス(……やはり、最近までの報告で考えると、取り立てて目立つ要素のある森ではない)
ゲーチス(ある特定の地域に、近隣の人間が通常の範囲を越えた関心を寄せているとしたら)
ゲーチス(それだけの『なにか』が、あの森に存在してきた可能性もあったのだが……)
細く溜め息をつく。
予想はしていたが、ろくな収穫はなかった。
ゲーチス(以前にも調べたが、その報告と大きく違うところもないようだ)
ゲーチス(これなら、サンギのあそこの方がよほど今に続く“いわく”がある)
ゲーチス(イッシュの昔話もたしか……この森が舞台だったように記憶しているが)
ゲーチス(それも時代があまりに違うから、『ミュウツー』とは関係はあるまい)
ゲーチス(……『ミュウツー』が本当に森にいたとしても、せいぜいこの一年以内にやってきたということか)
ゲーチスは厳しい顔を作る。
期待していなかったとはいえ、こうも存在を示唆するものが少ないのは残念だった。
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